足場の強度、本当に「感覚」で大丈夫?
現場で足場を組むとき、「いつもこれくらいだから大丈夫」で済ませていないだろうか。10段程度の塗装用足場なら経験則で問題ないことも多いが、段数が増えたり防炎シートを張ったりすると、建枠の軸力や壁つなぎにかかる風荷重は一気に跳ね上がる。
このツールは、足場の種類・段数・作業荷重・壁つなぎ間隔を入力するだけで、建枠の圧縮検定比と壁つなぎの引張検定比を自動計算する。施工計画書の「強度検討」パートを、スマホからでも現場でサッと確認できるようにした。
なぜ足場荷重・強度検討ツールを作ったのか
Excelの計算書が現場で使えない問題
足場の強度検討といえば、Excelの計算書テンプレートが定番だ。仮設工業会が出しているひな型を使っている現場も多いだろう。だがあのExcel、セルの参照がややこしくて入力ミスが起きやすい。段数を変えたのに自重の合計が変わっていなかった、なんて経験はないだろうか。
しかも現場でExcelを開くにはPCが必要。タブレットでも動くが、セルの小さい表をピンチズームしながら操作するのはストレスがある。
「検定比1.0以下」を一目で判断したい
足場の強度検討で最も重要なのは、検定比が1.0以下かどうか。圧縮検定比も壁つなぎの検定比も、この数字がすべてを物語る。複雑な計算書の中でこの数字を探す手間を省き、入力した瞬間にOK/NGが色で分かるツールが欲しかった。
こだわった設計判断
- 枠組足場とくさび緊結式で建枠プリセットを自動切替。種類を変えるたびに手動で許容荷重を調べ直す必要がない
- 養生シートなし時にも建枠の充実率ベースで風荷重を計算。「シートを外したから風荷重ゼロ」という危険な誤解を防ぐ
- 壁つなぎ間隔が労安則の上限(水平5.5m×垂直5.0m)を超えると警告表示。計算以前の法令違反を見逃さない
足場の強度検討とは — 検定比で安全性を数値化する
足場 強度計算 の基本構造
足場の強度検討は、大きく分けて鉛直荷重に対する検定と水平荷重(風荷重)に対する検定の2軸で行う。
鉛直荷重は、足場自体の重さ(自重)と作業員・資材の重さ(積載荷重)の合計だ。これが建枠の柱1本にどれだけかかるかを計算し、建枠の許容圧縮荷重と比較する。
圧縮検定比 = 建枠1本あたりの軸力 / 建枠の許容圧縮荷重
水平荷重は主に風によるもの。養生シートやメッシュシートが風を受け、その力が壁つなぎを通じて建物に伝わる。壁つなぎ1箇所にかかる引張力を計算し、壁つなぎの許容耐力と比較する。
壁つなぎ検定比 = 壁つなぎ1箇所の引張力 / 壁つなぎの許容耐力
どちらの検定比も1.0以下であればOK。超えた場合は、段数を減らす・建枠の仕様を上げる・壁つなぎの間隔を狭めるなどの対策が必要になる。
検定比 とは何か
検定比は「需要(かかる力)÷ 供給(耐えられる力)」を示す無次元数。たとえるなら、体重計に乗って「この椅子は自分の体重を支えられるか」をチェックするようなものだ。体重80kgの人が100kgまで耐えられる椅子に座れば検定比0.8。安全に座れる。120kgの人が座ろうとすると検定比1.2。椅子が壊れる可能性がある。
足場でも同じで、鉛直方向と水平方向それぞれで「かかる力÷耐えられる力」を計算し、1.0以下に収まっているかを確認する。
積載荷重 の区分(労安法・仮設工業会基準)
足場の積載荷重は作業内容によって3段階に分類される:
| 区分 | 荷重 | 作業内容 |
|---|---|---|
| 軽作業 | 1.0 kN/m² | 塗装・仕上げ・点検 |
| 重作業 | 2.5 kN/m² | とび工事・型枠・配管 |
| 超重作業 | 3.5 kN/m² | 解体・コンクリート打設 |
くさび式足場 積載荷重 は面荷重では決まらない
ここが枠組足場とくさび緊結式の一番大きな違いで、しかも見落とされやすい。上の kN/m² の区分はわく組足場・型枠支保工の系譜の考え方で、くさび緊結式には仮設工業会「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」が1層1スパンあたりの実数値で上限を切っている。
| 梁間方向の支柱間隔 | 1層1スパンの積載荷重 | 1スパンの積載荷重の合計 |
|---|---|---|
| 400mm以上900mm未満 | 200kg | 400kg |
| 900mm以上・連続スパン載荷 | 250kg | 500kg |
| 900mm以上・1スパンおき載荷 | 400kg | 800kg |
「合計」欄が1層値のちょうど2倍になっているのは偶然ではない。1スパン間の積載は同時2層までと決まっているからだ。3層に同時載荷する前提で計画を立てた時点で、検定比を計算するまでもなく基準から外れている。
さらに②として「最大積載荷重は、床付き布わく及び緊結部付床付き布枠の許容積載荷重を超えないこと」という条件が重なる。床付き布わくの許容は幅で決まる:
| 布わくの幅 | 許容積載荷重(1枚) |
|---|---|
| 240mm | 120kg |
| 250mm | 125kg |
| 300mm | 150kg |
| 400mm | 200kg |
| 500mm | 250kg |
幅240mmを2枚敷けば布わく側は240kgで、連続スパン載荷の250kgより先に頭を打つ。上の表と布わくの許容の、小さい方が支配する。本ツールではくさび緊結式を選ぶと載荷区分・布わくの幅・枚数の3つを入力でき、どちらが支配しているかを明示したうえで積載検定比を出す。
面白いのは、この2つの基準が食い違う場面が実際にあることだ。梁間1800mmのスパンに重作業(2.5 kN/m²)を想定すると 2.5 × 1.8 × 0.6 = 2.7 kN ≒ 275kg で、連続スパン載荷の上限250kgを1割超える。面荷重の感覚だけで「重作業だから2.5」と置くと、技術基準には収まっていないという状態が起きる。
参考: 仮設工業会「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」
なぜ足場の強度検討が重要なのか
足場倒壊事故の実態
厚生労働省の労働災害統計によると、足場からの墜落・転落は建設業の死亡災害の中で常に上位を占めている。2023年の建設業における死亡災害は281人で、そのうち墜落・転落が約4割。足場の倒壊や崩壊は、複数の作業員が同時に被災する重大災害につながる。
労安法・労安則の規定
労働安全衛生規則(労安則)第563条〜第571条に足場の構造基準が定められている。具体的には:
- 建枠の高さが5mを超える枠組足場には壁つなぎが必要(労安則第570条)
- 壁つなぎの間隔は垂直方向5m以下、水平方向5.5m以下(同条)
- 積載荷重は労安則第562条に基づき、作業内容に応じた値を設定する
違反した場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となる(労安法第119条)。
検定比の大小が設計にどう影響するか
検定比が0.5程度であれば十分な余裕がある。0.8を超えてくると、少しの条件変更(台風接近による風速増加、資材の仮置きによる荷重増加)で1.0を超えるリスクがある。現場では「0.8以下を目安に」と言われることが多い。
施工計画書から現場巡視まで、この場面で使える
施工計画書の強度検討パート作成時
足場を計画する段階で、段数・スパン・作業内容を入力すれば検定比がすぐわかる。Excel計算書に転記する前のクイックチェックに使える。
KY活動・ツールボックスミーティングで
「今日から解体作業に入るけど、足場の強度は大丈夫?」という疑問にその場で答えられる。作業荷重区分を変えて検定比の変化を見せれば、具体的な数値で安全を説明できる。
既存足場の増段・用途変更時
塗装用に組んだ足場を解体作業に転用する、3段増段するなど、現場では計画変更が頻繁に起きる。変更後の条件で即座に再検討できるのがこのツールの強みだ。
基本の使い方
3ステップで検定結果が出る。入力した瞬間にリアルタイムで計算されるので、待ち時間はゼロ。
Step 1: 足場の仕様を選ぶ
枠組足場かくさび緊結式かを選択し、建枠の仕様をプルダウンから選ぶ。段数とスパン数を入力する。
Step 2: 荷重条件を設定する
作業荷重区分(軽作業/重作業/超重)、積載段数、養生シートの種類を選ぶ。壁つなぎの間隔と種類も入力する。くさび緊結式を選んだ場合は、ここに載荷区分(梁間方向の支柱間隔と載荷パターン)・床付き布わくの幅・枚数が追加で出る。技術基準の最大積載荷重の照査に使う入力で、枠組足場では表示されない。
Step 3: 検定結果を確認する
圧縮検定比と壁つなぎ検定比が色付きで表示される。1.0以下なら緑〜青でOK、超過なら赤でNG。くさび緊結式ではこれに積載荷重の検定比が加わり、許容側が技術基準と布わくのどちらに支配されているかも表示される。「結果をコピー」で施工計画書に貼り付けられる(積載荷重の照査行も含まれる)。
具体的な使用例 — 6つの検証ケース
ケース1: 10段・塗装用足場(枠組・軽作業)
入力値:
- 足場種類: 枠組足場(1829×1700, 39.2kN)
- 段数: 10段 / スパン数: 5
- 作業荷重: 軽作業 (1.0kN/m²) / 積載段数: 1段
- 壁つなぎ: 水平5.5m × 垂直5.0m / 単クランプ
計算結果:
- 自重: 0.35 × 1.829 × 0.6 × 10 / 2 = 1.92 kN
- 積載: 1.0 × 1.829 × 0.6 × 1 / 2 = 0.55 kN
- 圧縮検定比: 2.47 / 39.2 = 0.06
→ 解釈: 塗装用の10段足場は圧縮検定比に非常に余裕がある。軽作業なら建枠の許容荷重の6%程度しか使っていない。
ケース2: 15段・解体足場(枠組・超重作業)
入力値:
- 足場種類: 枠組足場(1829×1700, 39.2kN)
- 段数: 15段 / スパン数: 10
- 作業荷重: 超重 (3.5kN/m²) / 積載段数: 2段
- 壁つなぎ: 水平5.5m × 垂直5.0m / ダブルクランプ
計算結果:
- 自重: 0.35 × 1.829 × 0.6 × 15 / 2 = 2.89 kN
- 積載: 3.5 × 1.829 × 0.6 × 2 / 2 = 3.84 kN
- 圧縮検定比: 6.73 / 39.2 = 0.17
→ 解釈: 超重作業でも15段程度なら検定比は0.17と余裕がある。ただし積載段数を増やすと急激に上昇するので注意。
ケース3: 防炎シート張り・壁つなぎ限界
入力値:
- 足場種類: 枠組足場(1829×1700, 39.2kN)
- 段数: 10段 / 養生: 防炎シート
- 壁つなぎ: 水平5.5m × 垂直5.0m / 単クランプ(3.43kN)
計算結果:
- 風荷重: 0.588 × 1.0 × 5.5 × 5.0 = 16.17 kN
- 壁つなぎ検定比: 16.17 / 3.43 = 4.71
→ 解釈: 防炎シート全面張りで単クランプだと検定比が大幅超過。専用金物(10kN)に変更するか、壁つなぎ間隔を大幅に狭める必要がある。
ケース4: メッシュシート・標準壁つなぎ
入力値:
- 足場種類: 枠組足場 / 養生: メッシュシート
- 壁つなぎ: 水平5.5m × 垂直5.0m / 単クランプ(3.43kN)
計算結果:
- 風荷重: 0.588 × 0.34 × 5.5 × 5.0 = 5.50 kN
- 壁つなぎ検定比: 5.50 / 3.43 = 1.60
→ 解釈: メッシュシートでも単クランプでは検定比超過。ダブルクランプ(6.86kN)にすれば 5.50/6.86 = 0.80 で適正範囲に収まる。
ケース5: くさび緊結式・住宅用低層
入力値:
- 足場種類: くさび緊結式(1800×1800, 30.0kN)
- 段数: 4段 / 作業荷重: 重作業 / 積載段数: 1段
- 載荷区分: 梁間900mm以上・連続スパン載荷 / 布わく: 幅500mm × 2枚
- 壁つなぎ: 水平3.6m × 垂直3.6m / 単クランプ
計算結果:
- 圧縮検定比: 0.02程度
- 積載荷重: 2.5 × 1.8 × 0.6 = 2.7 kN ≒ 275kg / 許容250kg(技術基準が支配)= 1.10 → NG
- 壁つなぎ検定比(メッシュ): 0.588 × 0.34 × 3.6 × 3.6 / 3.43 = 0.76
- 根がらみ: 不要(4段以下)
→ 解釈: 圧縮・壁つなぎは余裕たっぷりなのに、積載だけが引っかかる。支柱の強度ではなく技術基準の上限に当たっているケースで、圧縮検定比0.02だけを見ていたら絶対に気づけない。布わくは500mm×2枚で500kgあるので布わく側は無罪、支配しているのは連続スパン載荷の250kgのほう。対処は3つ — 作業荷重区分を軽作業に落とす(110kg・比0.44)、載荷を1スパンおきにする(許容400kg・比0.69)、梁間方向の支柱間隔を見直す。住宅用低層でも「重作業を連続スパンで載せる」計画は基準から外れる。
ケース6: 高段数くさび緊結式・中層ビル
入力値:
- 足場種類: くさび緊結式(1800×1800, 30.0kN)
- 段数: 20段 / 作業荷重: 重作業 / 積載段数: 2段
- 載荷区分: 梁間900mm以上・1スパンおき載荷 / 布わく: 幅400mm × 2枚
- 壁つなぎ: 水平3.6m × 垂直3.6m / 専用金物
計算結果:
- 自重: 0.25 × 1.8 × 0.6 × 20 / 2 = 2.70 kN
- 積載: 2.5 × 1.8 × 0.6 × 2 / 2 = 2.70 kN
- 圧縮検定比: 5.40 / 30.0 = 0.18
- 積載荷重: 275kg / 許容400kg(布わく400mm×2枚=400kg・技術基準も400kg)= 0.69 → OK
- 1スパン合計: 275 × 2 = 550kg / 許容800kg = 0.69・同時載荷2層 → OK
- 壁つなぎ検定比: 0.588 × 0.34 × 3.6 × 3.6 / 10.0 = 0.26
→ 解釈: ケース5と積載荷重の実数値はまったく同じ275kgなのに、こちらは通る。載荷を1スパンおきにして許容が250→400kgに上がったからだ。同じ足場・同じ作業内容でも、載せ方の計画で合否が変わるのがくさび式の積載基準の特徴。なおこのケースは布わくの許容400kgと技術基準の400kgがちょうど並んでいて、どちらか一方でも下げると即座に支配側が入れ替わる。
仕組み・アルゴリズム — 仮設工業会基準の検定式
候補手法の比較
足場の構造検討には複数のアプローチがある:
- 簡易検定法(採用): 仮設工業会の手引きに基づき、検定比のみで合否判定。1スパン・1本の柱に着目した簡便な計算
- 詳細構造解析: 足場全体をフレームモデルとして有限要素法で解析。接合部の剛性や不整形配置も考慮できるが、専用ソフトが必要
- 転倒モーメント法: 足場全体の転倒と滑動を検討。基礎の支持力計算も含む包括的な方法
このツールは手法1の簡易検定法を採用した。現場で素早く検定比をチェックする目的には十分で、仮設工業会のガイドラインに直接対応している。
実装詳細 — 計算フロー
鉛直荷重の計算:
自重 W_d = γ × L × B × N
γ: 足場自重 (kN/m²/層) — 枠組0.35, くさび0.25
L: スパン長 (m)
B: 足場幅 (m) = 0.6m
N: 段数
積載荷重 W_l = w × L × B × n
w: 作業荷重 (kN/m²) — 軽1.0, 重2.5, 超重3.5
n: 積載段数
建枠1本あたり軸力 P = (W_d + W_l) / 2
圧縮検定比 R_c = P / P_a (P_a: 許容圧縮荷重)
風荷重の計算:
風荷重 W_w = q × C × A_w
q: 基準風速圧 = 0.588 kN/m²
C: 風力係数 — メッシュ0.34, 防炎1.0, なし0.12
A_w: 壁つなぎ1箇所の負担面積 = H_w × V_w
壁つなぎ検定比 R_t = W_w / T_a (T_a: 壁つなぎ許容耐力)
具体的な計算例
枠組足場(1829×1700, 許容39.2kN)、10段、重作業2段積載、メッシュシート、壁つなぎ5.5m×5.0mで計算:
自重 = 0.35 × 1.829 × 0.6 × 10 = 3.84 kN
積載 = 2.5 × 1.829 × 0.6 × 2 = 5.49 kN
軸力 = (3.84 + 5.49) / 2 = 4.67 kN
圧縮検定比 = 4.67 / 39.2 = 0.12 → OK
風荷重 = 0.588 × 0.34 × 5.5 × 5.0 = 5.50 kN
壁つなぎ検定比(単クランプ) = 5.50 / 3.43 = 1.60 → NG
壁つなぎ検定比(ダブル) = 5.50 / 6.86 = 0.80 → OK
圧縮は余裕だが壁つなぎは単クランプでNG。ダブルクランプに変更すれば適正範囲に収まる。
くさび緊結式で追加される積載荷重の照査
くさび緊結式を選んだときだけ、上の検定とは独立した経路がもう1本走る。ここで設計判断が要ったのは「面荷重の積載を、技術基準の実数値の上限にどう突き合わせるか」だった。
候補は2つあった。(A) 布わくの幅×枚数から作業床の実面積を出し、面荷重を掛けて積載荷重とする。(B) 既存の有効幅0.6mで積載荷重を出し、布わくの許容は上限値としてだけ使う。
採用したのは (B)。技術基準の書き方が「最大積載荷重は、床付き布わく…の許容積載荷重を超えないこと」というキャップの条件文であって、載荷面積の定義ではないからだ。(A) を採ると布わくの枚数を増やすほど積載荷重が増えるという、基準の意図と逆向きの挙動になる。あわせて (B) なら既存の圧縮検定比の計算に一切手を触れずに済み、枠組足場の結果が変わらない。
1層1スパンの実積載 P_l = w × L × 0.6 / 0.00980665 [kg]
w: 作業荷重 (kN/m²), L: スパン長 (m)
許容側は2つの小さい方が支配する
P_a1 = 技術基準の上限 — 200 / 250 / 400 kg(載荷区分で決まる)
P_a2 = 布わくの許容 × 枚数 — 幅240:120 … 幅500:250 kg/枚
P_a = min(P_a1, P_a2)
積載検定比 R_l = P_l / P_a
1スパン合計 = P_l × n / 合計上限(400 / 500 / 800 kg)
同時載荷層数 n ≤ 2(技術基準)
警告は包含関係を潰して1つに絞ってある。1層あたりが超過していれば合計も必ず超過するので、合計超過の警告は1層あたりと層数のどちらも成立していないときにだけ出す。3つ同時に赤が並んで、どれが根本原因か分からなくなるのを避けるためだ。
参考: 仮設工業会 / Wikipedia: 足場
Excel計算書や有料ソフトとの違い
Excelひな型との違い
仮設工業会のExcel計算書は詳細な検討が可能だが、入力セルが多く、条件変更のたびにシートを行き来する。このツールは必要最小限の入力で検定比に特化しており、30秒で結果が出る。
出回っているExcelひな型の多くはわく組足場向けに作られたものを流用していて、くさび緊結式に切り替えても積載荷重は kN/m² の面荷重のまま計算される。技術基準の1層1スパン200/250/400kgと床付き布わくの許容は、シートのどこにも現れないことが多い。前述のとおり梁間1800mmに重作業を連続スパンで載せると275kg対250kgで基準超過になるが、面荷重ベースのシートでは圧縮検定比0.02が出て「余裕」と読めてしまう。同じ入力で答えが割れるこの点が、本ツールをくさび式に使う一番の理由になる。
有料ソフト(ASIBA+等)との違い
ASIBA+のような専用ソフトは転倒検討・地盤反力計算・3Dモデリングまでカバーする。一方、このツールは「検定比を素早く確認する」一点に絞っている。足場の計画段階での概略チェックや、現場での即時確認に特化した位置づけだ。
モバイル対応
Excel計算書もASIBA+もPC前提の設計。このツールはスマホで快適に操作でき、現場でポケットからスマホを出して3タップで検定比を確認できる。
足場にまつわる豆知識
丸太足場から鋼製足場への変遷
日本の足場は戦前まで丸太足場が主流だった。1950年代に米国から鋼製枠組足場が導入され、1960年代の高度経済成長期に急速に普及した。現在は枠組足場とくさび緊結式足場が二大勢力で、新設の住宅工事ではくさび緊結式が主流になりつつある。
参考: Wikipedia: 足場の歴史
海外の足場基準
イギリスではBS EN 12811、アメリカではOSHA 29 CFR 1926 Subpart Lが足場の基準を定めている。日本の労安則と比較すると、壁つなぎの間隔や積載荷重の基準値に違いがある。グローバルプロジェクトでは現地基準の確認が必須だ。
現場で差がつく足場検討のコツ
積載段数は実態に合わせて設定する
「積載段数2段」がデフォルトだが、実際に2段同時に作業するかどうかで結果は大きく変わる。塗装工事で1段ずつ上がっていく工程なら積載段数1段でよい。逆に解体作業で複数段にガラが溜まるなら、枠組足場では3段も想定して安全側で見ておく。
ただしくさび緊結式では3段を「想定して検定する」という発想自体が使えない。技術基準で1スパン間の積載は同時2層までと決まっているので、3層に載る計画なら検定比の話ではなく計画そのものを直す。本ツールでくさび緊結式を選んで積載段数に3以上を入れると、検定比とは別に基準超過の警告が出る。
壁つなぎは「千鳥配置」が基本
壁つなぎの配置は水平・垂直の間隔だけでなく、千鳥(互い違い)配置にするのが基本。直線配置より風荷重の分散効果が高く、同じ間隔でも安全側に働く。
台風接近時は養生シートを畳む
防炎シートの風力係数は1.0。メッシュシートの0.34と比べて約3倍の風荷重がかかる。台風接近時にシートを畳む・メッシュに切り替えるだけで壁つなぎの検定比は大幅に改善される。
足場強度検討でよくある疑問
Q: 「連続スパン載荷」と「1スパンおき載荷」はどちらを選べばいい?
迷ったら連続スパン載荷(許容が厳しい側)にしておけば安全側になる。使い分けの実態としては、資材を各スパンに切れ目なく置く・複数班が横に並んで同時作業する、といった計画なら連続スパン載荷。1スパン空けて資材を集積する運用が計画上担保できるなら1スパンおき載荷を選べる。許容値が250kgと400kgで1.6倍違うので、ここの選択だけで合否がひっくり返ることは珍しくない(使用例のケース5とケース6が、実積載275kgのまま合否だけ入れ替わる例)。注意したいのは、これが現場の運用で守られる前提の値だという点で、計画時に1スパンおきで通したなら、実際にそう運用されているかは巡視で確認する必要がある。
Q: 床付き布わくの幅と枚数は、どこの寸法を入れればいい?
作業床として実際に敷く布わく1枚の幅(240〜500mm)と、1スパンに並べる枚数を入れる。カタログの呼び幅をそのまま選べばよい。この入力は許容側の上限にだけ効く設計で、載る荷重の大きさは変わらない。布わくの枚数を増やしても積載荷重が増えないのはそのためで、技術基準が布わくの許容を「これを超えないこと」というキャップとして書いているのに合わせている。幅240mm×2枚なら布わく側が240kgで、連続スパン載荷の250kgより先に頭を打つ——結果表示に「布わくが支配」と出るのはこの状態を指している。
Q: 吊り足場にも使える?
本ツールは枠組足場とくさび緊結式足場を対象としている。吊り足場は荷重の伝達経路が根本的に異なり(吊りチェーン・ワイヤーの引張力が支配的)、別の検討方法が必要になる。吊り足場の検討には仮設工業会の「吊り足場計画の手引き」を参照してほしい。
Q: 張出し足場はどう検討すればいい?
張出し足場は足場荷重に加えて、張出し部材の曲げモーメント検討が必要になる。本ツールの鉛直荷重計算は参考になるが、張出し部分は別途検討が必要だ。
Q: 仮設工業会認定品とは?
仮設工業会が定める技術基準に適合し、認定を受けた足場部材のこと。認定品には「仮設」マークが表示される。本ツールの建枠許容荷重は認定品の標準値を使用している。非認定品は許容荷重が異なる場合があるため、メーカーのカタログ値を確認してほしい。
Q: 入力データはサーバーに送信される?
一切送信されない。すべての計算はブラウザ内で完結しており、入力データは端末の外に出ない。通信が発生しないため、オフライン環境でも動作する。
まとめ
足場の強度検討は「検定比1.0以下」がすべて。このツールなら足場種類・段数・荷重条件を入力するだけで、建枠の圧縮検定比と壁つなぎの引張検定比を瞬時に確認できる。
施工計画書の作成から現場での即時チェックまで、足場の安全確認をもっと手軽に。建築の風荷重計算が気になった人は風圧力計算ツールも試してみて。
不具合や要望があれば、X (@MahiroMemo)から気軽に教えて。