安全率が8倍余っているのに、天板の真ん中が沈む
40角のアルミフレームで1.5mの作業台を組むことになった。強度計算をしてみると、曲げ応力は13.2 N/mm²。A6063S-T5の耐力110 N/mm²に対して安全率は8.3もある。8倍の余裕なら文句なしだろう、と部材を発注した。
ところが組み上げてワークを載せると、天板の中央が目に見えて沈む。水平器を置くと気泡が寄る。壊れてはいない。曲げても手を離せば戻る。それでも「使えない」。
計算では8倍余っていたはずなのに、なぜこうなるのか。答えは単純で、見ていた数字が違ったからだ。このケースのたわみは2.21mm。フレーム長1.5mに対する許容値をL/1000で見れば1.5mmなので、たわみのほうは最初から満たしていない。アルミフレームは鋼の3分の1しか硬くないので、強度がいくら余っていてもたわみが先に効く。
このツールは、その「先に効くほう」を毎回はっきり出すために作った。曲げ応力と安全率、たわみと制限値を並べて表示し、強度支配かたわみ支配かを判定のたびに明示する。
なぜ作ったのか——メーカーの式は正しいが、実務の手前で止まる
アルミフレームの強度計算は、メーカーの技術ページに式が載っている。中央集中荷重なら次の形だ。
δ = F·L³ / (48·E·I)
これは教科書どおりの正しい式で、間違ってはいない。ただ、この式のまま実務に持っていくと3か所で止まる。
1つめ、自重が入っていない。 式のFはあくまで「載せる荷重」で、フレーム自身の重さは勘定に入っていない。短いスパンなら誤差数%で済むが、50角を3000mm飛ばすと自重は1本あたり8.3kgになる。20kgを2本で分担したときの1本あたり10kgと、ほぼ同じ重さが最初から乗っている計算になる。たわみの45.3%が自重ぶんだ。ここを無視した数字は、長いスパンほど楽観的にずれていく。
2つめ、支持条件が1〜2種類しかない。 載っているのは両端支持の集中荷重か等分布くらいで、両端固定や片持ちは自分で公式集を引くことになる。装置架台では片持ちのセンサーアームも、ブラケットでがっちり留めた両端固定に近い箇所も普通に出てくる。
3つめ、断面性能を別ページから手で転記する必要がある。 そして転記しようとして気づくのだが、同じ「40角」でもメーカー系列によって断面二次モーメントが9.07〜10.4×10⁴mm⁴と15%違う。どちらの値で計算したかを覚えていないと、後から検算したときに合わない。
だったら、保守側の代表値を既定にしておいて、手元のカタログ値で上書きできるようにすればいい。そう考えたのがこのツールの出発点だ。
以前に作ったイレクターパイプの強度計算では、逆の手を使った。あちらは芯材が「溶融亜鉛メッキ鋼管」としか公表されておらず鋼種が特定できないため、材料規格から許容応力を組み立てられない。仕方なくメーカー公表の使用最大荷重を安全率1.0の基準点として校正した。アルミフレームは断面性能もJISの材料規格も両方公表されているので、素直に材料側から組める。同じ「パイプ・フレームの強度」でも、根拠の作り方が正反対になったのが面白かった。
アルミフレーム 強度計算の基礎——硬さのI、強さのZ
断面二次モーメント とは(たわみを決める量)
曲げに効く断面の性質は2つある。ひとつが断面二次モーメント I(単位mm⁴)で、もうひとつが断面係数 Z(単位mm³)だ。役割がきれいに分かれていて、Iはたわみを決め、Zは応力を決める。「硬さのI、強さのZ」と覚えておくと混乱しない。
Iが効くのはたわみの式だ。
δ = 係数 × W·L³ / (E·I)
分母にIがいるので、Iが2倍になればたわみは半分になる。そしてIは断面の寸法の4乗で効く。40角から50角に上げるとIは90,700→263,000 mm⁴で約2.9倍。寸法は1.25倍にしかなっていないのに、たわみは3分の1近くまで落ちる。「たわむから太くする」がよく効くのはこのためだ。
Zが効くのは応力の式で、対称断面ならZ = 2I/h(hは荷重方向の断面高さ)でIと結びついている。
σ = M / Z
40角なら I=90,700 mm⁴、h=40mm なので Z=4,535 mm³ になる。詳しくは断面二次モーメントの解説を見てほしい。
アルミフレーム たわみ 計算がなぜ「強度より先に」効くのか
ここからがアルミ特有の話になる。材料側の性質を鋼と並べてみる。
| アルミ合金 | 一般構造用鋼 | 比 | |
|---|---|---|---|
| 縦弾性係数 E | 70,000 N/mm² | 205,000 N/mm² | 約1/3 |
| 0.2%耐力(代表) | 110〜205 N/mm² | 235 N/mm²級 | 約1/2〜1 |
強度(耐力)は鋼の半分から同程度なのに、硬さ(E)だけが3分の1しかない。たわみの式の分母にEがいるので、これは「同じ形の梁なら、アルミは鋼の2.93倍たわむ」という意味になる。強度の不利より硬さの不利のほうが大きい——だから、強度とたわみのどちらが先に限界に来るかというと、ほぼ必ずたわみのほうなのだ。
このアンバランスは実際の数字で見るとはっきりする。40角・両端支持・等分布・スパン1000mm・荷重30kgを2本で分担した場合がこうなる。
- 曲げ応力 σ = 4.51 N/mm²(耐力110 N/mm²の24分の1)
- たわみ δ = 0.336mm(L/1000制限の1.0mmの3分の1)
強度は24倍余っているのに、たわみは3倍しか余っていない。同じ条件で荷重を増やしていけば、先に頭を打つのはたわみのほうだ。アルミのヤング率が合金や熱処理でほとんど変わらないことについてはヤング率も参照してほしい。
支持条件でモーメントは8倍変わる
もうひとつ効くのが支持条件だ。同じ荷重・同じスパンでも、支え方で最大曲げモーメントはこれだけ変わる。
| 支持条件 | 最大曲げモーメント | 最大たわみ |
|---|---|---|
| 両端固定・等分布 | W·L/12(端部) | W·L³/(384EI) |
| 両端支持・等分布 | W·L/8 | 5W·L³/(384EI) |
| 両端固定・中央集中 | W·L/8(端部) | W·L³/(192EI) |
| 両端支持・中央集中 | W·L/4 | W·L³/(48EI) |
| 片持ち・等分布 | W·L/2(根元) | W·L³/(8EI) |
| 片持ち・先端集中 | W·L(根元) | W·L³/(3EI) |
一番緩い両端固定・等分布のW·L/12から、一番厳しい片持ち・先端集中のW·Lまで、8倍の開きがある。たわみに至っては384分の1と3分の1で128倍だ。設計を変えずに支持の仕方を変えるだけで、成立するかどうかがひっくり返る。
材料の規格値はJIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)の表3が一次資料になる。このツールはそこに載る規格最小値を採っていて、A6063S-T5が引張強さ150・耐力110 N/mm²、A6N01S-T5が引張強さ245・耐力205 N/mm²だ。よく引用される「A6063-T5は引張185・耐力145」は代表値であって規格値ではないので、安全側に規格の下限を使っている。
実務での重要性——壊れていないのに使えない、が起きる
アルミフレーム架台の失敗は、たいてい「破損」の形では来ない。
- 搬送コンベアの支持梁が数mm沈み、ワークの受け渡し位置がずれる
- 検査装置のカメラステーがたわんで焦点位置が変わる
- 作業台の天板が中央で沈み、水平器が振り切る
- 長い片持ちアームの根元ボルトが緩んで、さらに垂れる
どれも部材は無事だ。手で押せば戻る。それでも装置としては使えない。アルミフレームが装置の位置決め精度や搬送面の平面度を担っている以上、判定基準は強度ではなく変形量になる。
たわみ制限がL/1000である理由
アルミフレームメーカーが許容荷重の基準に採っているのはL/1000のたわみだ。「長さ1000mmで1mmたわむ荷重を実用上の最大許容荷重とする」と明記されている。鋼の梁で慣用的に使うL/300の3倍以上厳しい。
厳しすぎるように見えるが、スパン1500mmで実際の数値にするとこうなる。
| 制限 | 1500mmでの許容たわみ | 用途の目安 |
|---|---|---|
| L/1000 | 1.5mm | 装置架台の標準 |
| L/500 | 3.0mm | 一般的な架台・フレーム構造 |
| L/300 | 5.0mm | 棚・作業台(見た目だけが問題) |
装置の受け渡し面が5mm動いたら、それはもう位置決めではない。L/1000という数字は精度から逆算された値なのだ。
自重は「もう乗っている荷重」
そしてもうひとつ、メーカーの式が拾わない要素が自重だ。
50角を3000mm飛ばすと、フレーム1本の自重は8.3kgになる(2.7567kg/m × 3m)。20kgの荷物を2本で分担すれば1本あたり10kg。自重と荷重がほぼ同じ大きさになっている。実際、この条件ではたわみの45.3%が自重ぶんだ。荷物を全部降ろしても、たわみは半分にしかならない。
もっと極端な例もある。20角を2000mm飛ばすと、荷重をほぼゼロにしても自重だけでたわみが2.03mmになり、L/1000の制限2.0mmを超える。何も載せていない状態で不合格ということだ。メーカーの強度目安表が同じサイズ・同じスパンで「0.6kgfまで載せられる」と書いているのは、自重を計算に入れていないからにほかならない。
だからこのツールは、断面を選んだ時点で自重を等分布荷重として自動的に足し込む。結果には「このスパン1本ぶんの自重」と「たわみに占める自重の割合」を出すようにした。長いスパンで数字が急に厳しくなったら、それは自重が効き始めたサインだ。
安全率を「耐力」に対して定義している理由
このツールの安全率は、引張強さではなく0.2%耐力に対して取っている。曲げで実際に困るのは破断ではなく、荷重を降ろしても元に戻らない曲がりが残ることだからだ。その境界が耐力である以上、そこを基準にしないと判定の意味が実務とずれる。A6063S-T5なら110 N/mm²、A6N01S-T5なら205 N/mm²がその線になる。
こんな場面で使う
装置架台・機械フレームの天板受け。 40角を何mmで飛ばせるか、天板を前後2本で受けるか3本にするか。設計の一番最初に決まってしまう寸法なので、ここでたわみを見落とすと後から効いてくる。
搬送コンベア・シュートの支持梁。 受け渡し面の高さが数mm変わると位置決めが破綻する用途で、長いスパンを飛ばしたがる場所でもある。自重の寄与が一番大きく出るのもここだ。
検査装置のカメラステー・センサーアーム。 片持ちで突き出すため、同じ荷重でも両端支持の4倍のモーメントがかかる。絶対量で1mm以内といった管理をすることが多い。
作業台・ワークベンチ・治具フレームの自作。 人が体重をかけるわけではないが、工具や材料をまとめて置くと意外に荷重が集まる。3Dプリンタやレーザー加工機の門型フレームも同じ考え方で見られる。
基本の使い方
1. 断面サイズと材質を選ぶ。 20角・30角・40角・50角・40×80(縦置き/横置き)から選ぶ。手元にメーカーカタログがあるなら「カタログ値を直接入力」を選び、断面二次モーメント・断面高さ・質量を入れれば自分の使う型番の値で計算できる。材質はA6063S-T5が既定で、高強度が必要ならA6N01S-T5に切り替える。
2. 支持条件・スパン・荷重を入れる。 両端支持・両端固定・片持ちの3種類×等分布・集中の6通りから選び、支持点間の距離(片持ちなら突き出し長さ)と載せる合計の重さ、その荷重を分け合うフレームの本数を入れる。フレーム自重は自動で加算されるので、荷重に含める必要はない。
3. 判定と比較表を見る。 曲げ応力・安全率・たわみが出て、成立/注意/危険の3段階で判定される。あわせて「この条件で載せられる荷重」と、それが強度支配かたわみ支配かが表示される。成立しない場合は、成立する最大スパンと目標を満たす最小本数が逆算される。
迷ったら両端支持・等分布+L/1000+安全率3.0のままでいい。実際のブラケット結合は完全固定にならないので、両端支持で見ておくのが安全側になる。用途プリセット4件から始めれば、近い条件を1クリックで読み込める。
具体的な使用例——10ケースで検証する
すべてこのツールで実際に計算した値だ。
ケース1: 装置架台の天板受け(基準になる形)
40角・A6063S-T5・両端支持等分布・スパン1000mm・荷重30kg・2本・L/1000・目標安全率3.0。
→ 曲げ応力4.51 N/mm²、安全率24.4、たわみ0.336mm(制限1.0mm)、載せられる荷重96.1kg、たわみ支配、判定は成立。
強度が24倍も余っているのに、載せられる荷重を決めているのはたわみのほうだ。アルミフレームの標準的な姿がこれだと思っていい。ちなみに同じ断面を鋼で作ったとすればたわみは0.115mmで、3分の1近くまで落ちる。
ケース2: 作業台の長スパン(たわみで落ちる典型)
40角・両端支持等分布・スパン1500mm・荷重60kg・2本・L/1000。
→ 安全率8.34(目標3.0はクリア)、たわみ2.21mm(制限1.5mm)でNG、載せられる荷重39.1kg、必要本数4本、判定は注意。
冒頭に書いた作業台がこれだ。強度だけ見れば余裕なのに、たわみで不合格になる。
ケース3: 同じ条件を両端固定にすると
ケース2の支持条件だけを両端固定・等分布に変える。
→ 安全率12.5、たわみ0.442mm(2.21mmの5分の1)、載せられる荷重215.9kg、判定は成立。
支持条件を変えるだけでひっくり返った。ただし実際のブラケット結合がここまで固まることはまずないので、この数字は「最も良く効いた場合の上限」として見るべきだ。
ケース4: 片持ちのセンサーアーム
30角・片持ち先端集中・スパン400mm・荷重8kg・1本・1mm以内。
→ 安全率5.80、たわみ0.958mm(制限1.0mm)、載せられる荷重8.35kg、成立する最大スパン406mm。
ぎりぎり成立している。最大スパンが406mmということは、あと6mm伸ばしたら落ちるということでもある。片持ちは長さが効くので、余裕を持たせるなら短くするのが一番早い。
ケース5: コンベアの支持梁(40×80を縦置き)
40×80縦置き・両端支持等分布・スパン2000mm・荷重80kg・2本・L/1000。
→ 安全率16.6、たわみ0.985mm(制限2.0mm)、載せられる荷重173.9kg、判定は成立。たわみの12.2%が自重ぶん。
2mを飛ばして80kgが載る。40×80を縦に使えばこのクラスまで届く。
ケース6: 同じ材を横置きにすると
ケース5の断面を40×80横置き(40mm側が荷重方向)に変えるだけ。質量も断面積も同じ材だ。
→ 安全率7.90、たわみ4.15mm(制限2.0mm)でNG、載せられる荷重32.9kg、必要本数5本、判定は注意。
たわみが0.985mm→4.15mmと4.2倍になった。断面二次モーメントが674,900→160,300 mm⁴に落ちるためだ。同じ部材でも向きを間違えるとこれだけ違う。
ケース7: 強度支配になる数少ないケース
30角・両端支持中央集中・スパン400mm・荷重100kg・1本・L/300。
→ 曲げ応力58.2 N/mm²、安全率1.89(目標3.0に未達)、たわみ0.740mm(制限1.33mm)はクリア、強度支配、判定は注意。
短スパン・大荷重・緩いたわみ制限の3つが揃うと、たわみ側に余裕ができて強度が先に来る。アルミフレームで強度支配になるのはこういう条件のときだ。
ケース8: 危険判定が出る条件
20角・片持ち先端集中・スパン500mm・荷重20kg・1本・L/300。
→ 曲げ応力156.5 N/mm²(耐力110を超過)、安全率0.70、たわみ18.6mm、必要本数12本、成立する最大スパン118mm、判定は危険。
耐力を超えているので、荷重を降ろしても曲がりが残る領域だ。必要本数12本という数字は「本数では解決しない」ことを意味している。
ケース9: 材質を変えてもたわみは変わらない
20角・片持ち先端集中・スパン300mm・荷重15kg・1本・L/300で、材質だけを入れ替える。
| 材質 | 0.2%耐力 | 安全率 | たわみ |
|---|---|---|---|
| A6063S-T5 | 110 N/mm² | 1.56 | 3.012mm |
| A6N01S-T5 | 205 N/mm² | 2.91 | 3.012mm |
安全率は1.86倍になったのに、たわみは小数第3位まで完全に同じだ。強度は材質で買えるが、硬さは買えない。たわみで困っているときに材質を上げても意味がないことが、この2行で分かる。
ケース10: 自重だけで不成立になる
20角・両端支持等分布・スパン3000mm・荷重0.1kg(ほぼ無負荷)・1本・L/1000。
→ たわみ11.04mm(制限3.0mm)でNG、たわみの92.9%が自重ぶん、載せられる荷重0.0kg、必要本数は算出不能。
何も載せていないのに落ちる。本数を増やしても1本あたりの自重は減らないので、この状態は本数では救えない。ツールも「本数追加では解決しない」と返し、断面のサイズアップかスパンの短縮を促すようにしてある。
仕組み・アルゴリズム
自重をどう扱うか——2つの選択肢
手法A: 自重を無視する。 メーカーの技術ページと、無料で使えるツールの大半がこれだ。式が単純になり、短いスパンなら誤差は数%で済む。だがケース10で見たように、50角3000mmでは45%、20角3000mmでは93%ずれる。
手法B: 自重を等分布荷重として重ね合わせる。 こちらを採った。荷重ぶんと自重ぶんを別々の係数で足し込む。
Pload = (W / n) × 9.80665 // 1本あたりの荷重 [N]
Pself = (質量[kg/m] × L / 1000) × 9.80665 // 1本ぶんの自重 [N]
M = (mCoef · Pload + selfMCoef · Pself) × L
δ = (dCoef · Pload + selfDCoef · Pself) × L³ / (E · I)
自重は必ず等分布なので、selfMCoef / selfDCoef にはその支持条件が属する族(両端支持・両端固定・片持ち)の等分布係数を入れる。両端支持中央集中なら、荷重ぶんは1/4と1/48だが、自重ぶんは1/8と5/384になる。
重ね合わせが「近似ではなく厳密」になる理由
異なる荷重の結果を足し合わせるのは弾性範囲なら一般に許される操作だが、最大値の位置が違えば単純に足しても最大値にはならない。ここが問題になりそうに見えて、実はならない。
| 支持の族 | 最大モーメントの位置 | 最大たわみの位置 |
|---|---|---|
| 両端支持 | 中央(等分布も集中も) | 中央(同上) |
| 両端固定 | 端部(等分布も集中も) | 中央(同上) |
| 片持ち | 根元(等分布も集中も) | 先端(同上) |
3つの族すべてで、等分布と集中の最大値の発生位置が一致している。したがって単純加算がそのまま最大値になり、この重ね合わせは近似ではなく厳密だ。
実装上は、支持条件6種の係数をmCoef / dCoef / selfMCoef / selfDCoefの4つ組にしてテーブルに持たせ、計算側に条件分岐を書かない形にしてある。
載せられる荷重は、自重ぶんを先に引いてから逆算する
「この条件で何kgまで載るか」を出すとき、自重は荷重に比例しない固定分なので、先に差し引いておく必要がある。
強度側: Pload_max = (σa − σ_self) × Z / (mCoef × L)
たわみ側: Pload_max = (δlim − δ_self) × E × I / (dCoef × L³)
両方を[kg]に直して小さいほうを採り、どちらが小さいかで強度支配/たわみ支配が決まる。自重だけで制限を超えていると括弧の中が負になるので、0にクランプする。ケース10の「載せられる荷重0.0kg」はこれだ。
最大スパンだけ二分探索にした理由
必要本数は閉形式で解ける。自重項は本数を増やしても1本あたり変わらないので、分母から差し引いて比例計算するだけでいい。分母が0以下なら「何本にしても不可能」と判定でき、これがケース10で必要本数が算出不能になる仕組みだ。
一方、最大スパンは閉形式を諦めた。自重の曲げモーメントはL²、たわみはL⁴で効くので、たわみ制限がL/1000のような比率だと3次方程式、1mm固定だと4次方程式になる。ただし応力もたわみ比もLについて単調増加であることは示せるので、80回の二分探索で実質厳密な値が出る。区間幅は5900mmを2の80乗で割った値まで縮むので、表示桁に影響しない。
式と定数をどう検証したか
式そのものの検証。 メーカー系の公表する強度目安表は「長さ1000mmで1mmたわむ荷重を実用上の最大許容荷重とする」(L/1000基準)と明記している。そこで20角の公表値2.4kgf@1000mmと0.6kgf@2000mmからδ = PL³/(48EI)を逆に解いてみると、どちらのスパンからもI=0.700×10⁴mm⁴という同一の値が出た。1/L²のスケーリングがぴたりと一致する。30角も9.5kgf@1000mmからI=2.77×10⁴となり、調査した2系列の範囲(2.53〜2.83×10⁴)に収まった。式と基準が公表表を再現できることを、これで確認している。
断面性能の検証。 2系列の公表値を突き合わせたら同じ呼称で10〜15%違ったので、保守側(小さいI)を代表値に採った。そのうえで、断面積×0.0027(密度2.70 g/cm³)で計算した質量を公表質量と比べると、6断面すべてで誤差0.1%以内に一致した。
| 断面 | 断面積 | 計算質量 | 公表質量 |
|---|---|---|---|
| 20角 | 162 mm² | 0.4374 kg/m | 0.437 kg/m |
| 30角 | 281 mm² | 0.7587 kg/m | 0.758 kg/m |
| 40角 | 627 mm² | 1.6929 kg/m | 1.693 kg/m |
| 50角 | 1021 mm² | 2.7567 kg/m | 2.758 kg/m |
| 40×80 | 1026 mm² | 2.7702 kg/m | 2.770 kg/m |
断面積と質量が互いの裏を取れているので、質量はテーブルに持たず断面積から導出している。
なお本ツールは保守側のIを採り、さらに自重を加算するので、公表目安表より1〜2割低い許容荷重を返す。これは意図した設計で、結果画面にもその旨を常時表示している。
ステップバイステップの計算例
ケース1(40角・両端支持等分布・1000mm・30kg・2本)を最初から追う。
Pload = (30 / 2) × 9.80665 = 147.100 N
自重 = 1.6929 kg/m × 1.0 m = 1.6929 kg
Pself = 1.6929 × 9.80665 = 16.602 N
M = (0.125 × 147.100 + 0.125 × 16.602) × 1000
= 20,462.7 N·mm = 20.46 N·m
Z = 2 × 90,700 / 40 = 4,535 mm³
σ = 20,462.7 / 4,535 = 4.51 N/mm²
安全率 = 110 / 4.51 = 24.4
δ = (5/384 × 147.100 + 5/384 × 16.602) × 1000³ / (70,000 × 90,700)
= 0.336 mm (うち自重ぶん 0.034 mm = 10.1%)
たわみ制限1.0mmに対して0.336mm、安全率は目標3.0に対して24.4。載せられる荷重96.1kgを決めているのはたわみ側で、判定はたわみ支配になる。
他のツールとどう違うのか
アルミフレームの強度を調べる手段は、大きく2つある。それぞれ得意な範囲がはっきり違う。
メーカー公式の強度目安表は、自社製品の型番単位で正確だ。実測に裏打ちされていて、その型番を買うなら一番信用できる。ただし表に載っている支持条件は限られていて、他社材や手元の在庫材には使えない。前半で触れたとおり自重も入っていないので、長いスパンでは表の数字より実物のほうがたわむ。
汎用の梁計算ツールは支持条件を自由に選べるが、断面二次モーメントと断面係数を自分で入力する必要がある。結局アルミフレームのカタログを別のタブで開いて数値を探すことになり、その転記が一番間違えやすい。
このツールは、その両方の間を埋める位置に置いた。断面は代表値をプリセットで持ちつつ、手元のカタログ値があれば断面二次モーメント・断面高さ・質量をそのまま入れて上書きできる。自重は断面を選んだ時点で自動的に加算され、支持条件は両端支持・両端固定・片持ちの3種類×等分布・集中の6通りから選べる。
そして断面サイズを横に並べた比較表を用意した。同じ材質・支持条件・スパン・荷重のまま断面だけを入れ替えた結果が6行並ぶので、「1サイズ上げたらどうなるか」がその場で分かる。設計の現場で本当に知りたいのはそこなのに、これに答えるツールが見当たらなかった。
サイト内には近い役割のツールがいくつかある。任意断面の汎用梁として使うなら梁の強度計算・たわみ計算ツール、JIS鋼材の断面性能を引くなら鋼材重量・断面性能計算ツール、イレクターパイプなら専用の強度計算、単管パイプなら耐荷重・スパン計算、木の棚板なら棚板たわみ計算シミュレーターがそれぞれ担当している。同じ「たわみ」でも、材料と部材の系統によって入口を分けてある。
豆知識——溝幅・合金番号・質別の読み方
溝幅の数字はボルト径そのもの
アルミフレームのカタログで最初に出てくる「溝幅6」「溝幅8」という数字は、そこに入るボルトの呼び径にほぼ対応している。溝幅6ならM6、溝幅8ならM8だ。つまり溝幅は「どのくらいの締結力を前提にした部材か」を示す指標でもある。
厄介なのは、同じ40角でも溝幅の系列によって肉厚の配分が変わることだ。溝を深く広く取れば、その分だけ肉が外周に回らない。断面の外側にある材料ほど曲げに効くので、溝の設計思想がそのまま断面二次モーメントの差になって現れる。
「6063」の6は何を意味するか
A6063の頭の6は、アルミ合金の系統を表す。6000番台はAl-Mg-Si系——アルミにマグネシウムとシリコンを加えた合金で、押出しやすさと表面のきれいさを優先した設計になっている。複雑な溝形状を長尺で安定して押し出せるのは、この押出性のおかげだ。アルマイトの仕上がりが揃うのも6063が選ばれる理由になっている。
より強度が欲しければA6N01(現行表記はA6005C)やA6061に上がる。ただし強度と押出性はトレードオフの関係にあり、強い合金ほど複雑な断面を押し出しにくく、価格も上がる。汎用のフレームがA6063を標準にしているのは、この釣り合いが実用範囲で一番良いからだ。
T5とT6は「途中で一度冷やすかどうか」の違い
質別記号のT5とT6は、押出した後の熱の与え方が違う。
- T5: 押出したときの高温状態からそのまま冷却し、時効処理する
- T6: 押出後にいったん溶体化処理(再加熱して急冷)してから時効処理する
T6のほうが一手間多い分だけ強度が上がる。同じA6063でも、規格上の0.2%耐力はT5とT6で倍近く違う。カタログに「A6063S-T5」と書いてあるのを見て「6063だから」と一括りにすると、耐力を取り違えることになる。
ヤング率だけは、何をしても変わらない
これが一番面白いところだ。合金を変えても、熱処理を変えても、アルミのヤング率は68〜70GPaからほとんど動かない。強度は倍近く変えられるのに、硬さは変えられない。
理由は、強度と弾性率で効いている物理が違うからだ。強度を上げる仕組みは、析出物や転位で「原子の面がすべるのを邪魔する」ことにある。一方ヤング率は原子どうしを結びつけている結合そのものの強さで決まる量で、内部に細かい析出物を散らしても結合の性質は変わらない。だから硬くならない。
このツールで材質をA6063S-T5からA6N01S-T5に切り替えても、安全率だけが変わってたわみが1mmも動かないのは、そういう理屈だ。使用例の材質を入れ替えたケースを見ると、小数第3位まで同じ値が並んでいる。
使うときのTips
たわみで困っているなら、材質ではなく断面を変える。 断面二次モーメントは寸法の4乗で効くので、1サイズ上げるだけでたわみは3分の1近くまで落ちる。材質を上げても耐力が変わるだけで硬さは変わらない。
長方形断面は向きを必ず確認する。 40×80のように縦横比のある断面は、荷重方向にどちらの寸法を向けるかでたわみが4倍以上変わる。使用例の縦置き・横置きを比べたケースが分かりやすい。カタログの断面性能欄にIxとIyが並んでいるときは、荷重がかかる向きの値を取る。
中間に脚を1本足せる場所を先に探す。 等分布荷重ではスパンを半分にするとたわみは16分の1になる。断面を太くするより効くうえ、材料費も安く済むことが多い。
両端固定は「上限の目安」として見る。 ブラケットで留めた程度では理論上の完全固定にはならない。実物の剛性は両端支持と両端固定の中間に入るので、迷ったら両端支持で判断しておくほうが安全側になる。
長いスパンでは自重の割合を必ず見る。 結果には「たわみに占める自重の割合」が出る。これが3割を超えていたら、荷重を減らしてもたわみは残りの割合ぶんしか改善しない。断面のサイズアップかスパンの短縮に切り替える判断材料になる。
よくある質問
メーカーの強度目安表と結果が合わないのはなぜ?
理由は3つある。1つめは断面性能で、このツールは同じ呼称のなかで**保守側(小さい断面二次モーメント)**の代表値を採っている。2つめはフレーム自重を加算していること。3つめは支持条件で、目安表は両端支持・中央集中を前提にしていることが多い。結果として公表値より1〜2割低い許容荷重が出る。手元にカタログがあるなら「カタログ値を直接入力」で断面二次モーメント・断面高さ・質量を入れれば、そのメーカーの値に合わせられる。
材質をA6N01S-T5に変えたのに、たわみが1mmも変わらない。バグ?
正しい挙動だ。たわみを決めているのは縦弾性係数(ヤング率)で、アルミ合金では合金や質別を変えてもこれが70,000 N/mm²前後からほとんど動かない。変わるのは0.2%耐力のほう(A6063S-T5の110 N/mm²に対しA6N01S-T5は205 N/mm²)なので、安全率だけが上がってたわみは同じままになる。強度は材質で買えるが、硬さは買えない。たわみで落ちているときに材質を上げても解決しないので、断面のサイズアップかスパンの短縮に切り替えてほしい。
両端固定を選んでいいのはどんなとき?
厳密に言えば、ブラケット結合では両端固定はまず実現しない。両端固定とは梁の端が回転を一切許さない状態を指すが、溝ナットとボルトで留めた程度では必ず多少回る。実物の剛性は両端支持と両端固定の中間に入る。したがって両端固定の結果は「最も良く効いた場合の上限」として読むのが正しい。設計判断に使うなら両端支持で見ておくほうが安全側だ。両端固定を選ぶと画面にもその旨の注意が表示される。
「載せられる荷重 0.0kg」と出た。入力を間違えている?
入力ミスではなく、フレーム自重だけでたわみ制限(または耐力)を超えている状態だ。荷重をゼロにしても成立しないので、載せられる量が0になる。このとき必要本数も算出されない。本数を増やしても1本あたりの自重は減らないため、本数では原理的に解決しないからだ。対処は断面のサイズアップかスパンの短縮になる。細い断面で長いスパンを飛ばそうとすると起きやすく、使用例の無負荷で不成立になるケースがその実例になっている。
溝(スリット)の断面欠損は考慮されている?
されている。メーカーが公表している断面二次モーメント・断面係数・断面積は、溝を含んだ実際の形状に対する値だ。このツールはその公表値をそのまま使っているので、溝のぶんを別途割り引く必要はない。一方で、ブラケット・コネクタ・締結ボルト・溝ナットの耐力は計算に含んでいない。実際のフレーム構造では本体より結合部で耐力が決まることが多いので、特に片持ちの根元は別途確認してほしい。
入力した寸法や荷重はどこかに送信される?
送信されない。計算はすべてブラウザ内のJavaScriptで完結していて、入力値がサーバーに送られることも保存されることもない。装置の寸法や積載条件は業務情報にあたることがあるが、ページを閉じればブラウザのメモリから消える。結果をコピーする機能も、クリップボードに書き込むだけで外部への通信は発生しない。
まとめ
アルミフレームは、鋼の3分の1の硬さしかないという一点で設計の勘所が変わる。強度が何倍余っていても、たわみが先に限界に来る。だからこのツールは、強度支配かたわみ支配かを毎回明示し、自重を自動で加算し、断面サイズを横に並べて比べられるようにした。
任意断面の梁として計算したいときは梁の強度計算・たわみ計算ツール、JIS鋼材の断面性能を引くなら鋼材重量・断面性能計算ツールが使える。同じ「パイプ・フレームで組む」でも材料が違えばイレクターパイプ 強度・たわみ計算や単管パイプ耐荷重・スパン計算、木の棚板なら棚板たわみ計算シミュレーターがそれぞれ担当している。
計算結果について気づいた点や、追加してほしい断面サイズがあればお問い合わせページから知らせてほしい。