木造 梁せい・スパン選定ツール

スパン・負担幅・樹種から曲げ・せん断・たわみの3検定を行い、成立する最小の梁せいを自動選定。何で決まったかまで表示する

スパン・負担幅・樹種から曲げ・せん断・たわみの3検定を行い、候補せい105〜450mmのうち成立する最小の梁せいを選ぶ。何で決まったか(曲げ/せん断/たわみ支配)と、どの荷重ケースで決まったかも同時に出るので、スパン表では判断できない「1ランク落とせるか」が読める。

典型ケースから選ぶ

梁の条件

DL 300 + 梁自重 / LL 1300 N/m²(木造の床(板張・根太を含む)150+下階の天井150

Fb 22.2 / Fs 1.8 / E 7000 N/mm²(平12建告1452号 第五号

梁の支点間距離。900〜6000mm

両隣の梁との間隔の平均(左スパン+右スパン)÷2

梁幅 b(mm)

柱寸法に合わせるのが一般的。構造用集成材の流通は105・120・150が中心

荷重の指定

プリセットは令84条・令85条から自動組立(梁自重も自動加算)。直接入力では梁自重を自動加算しない

変形増大係数2を乗じた設計用たわみに対する制限

3000〜15000で上書き。県産材スパン表の実測E値などを入れて再計算できる

選定結果

推奨断面 b×h105×210 mmたわみ支配・常時(G+P)・最大検定比 0.86
成立

推奨梁せい h

210 mm

候補13種のうち3検定を満たす最小のせい

支配要因

たわみ

検定比 0.86

支配した荷重ケース

常時(G+P)

許容応力度の係数が変わる

採用ヤング係数 E

7,000 N/mm²

樹種の標準値

曲げ σ/fb0.41 / 1.00

許容曲げ 8.14 N/mm²=Fb 22.2 × 寸法係数 1.00 × 1.1/3(常時(G+P))

せん断 τ/fs0.29 / 1.00

τ = 1.5Q/A ÷ 許容せん断 0.66 N/mm²=Fs 1.8 × 1.1/3(常時(G+P))

たわみ δ設計/δ許容支配0.86 / 1.00

2δi 12.5 mm ÷ 許容 14.6 mm(L/250)

等分布荷重 w

1.55 N/mm

kN/m と同値

最大曲げモーメント M

2.56 kN·m

wL²/8

最大せん断力 Q

2.82 kN

wL/2

必要断面係数 Z_req

315 cm³

M ÷ 許容曲げ応力度

必要断面二次モーメント I_req

6,939 cm⁴

2δi ≤ L/n を I について解いた値

選定断面の Z

772 cm³

bh²/6

選定断面の I

8,103 cm⁴

bh³/12

瞬時たわみ δi

6.2 mm

5wL⁴/(384EI)

設計用たわみ 2δi

12.5 mm

変形増大係数2(判定はこちら)

許容たわみ

14.6 mm

L/250

固定荷重 DL

400 N/m²

令84条+梁自重

積載荷重 LL

1,300 N/m²

令85条 大ばり用

積雪荷重 S

0 N/m²

床梁では常に0

たわみで決まっています。木造の梁はほとんどの場合たわみ支配なので、強度の高い樹種に替えるよりヤング係数Eの高い材(集成材など)に替えるか、梁せいを上げるほうが効きます(たわみはせいの3乗に反比例)。

梁と荷重の図

立面(単純梁・等分布荷重)断面 b×hw = 1.55 N/mm(負担幅 B = 910 mm)L = 3,640 mm設計用たわみ 2δi = 12.5 mm / 許容 14.6 mmh 210b 105105×210
等分布荷重 wたわみ形状・選定断面(成立寸法線

本ツールは単純梁(両端支持)+等分布荷重の概算選定。連続梁・片持ち梁・小屋束や柱直下の集中荷重・胴差は対象外で、仕口や継手の断面欠損(実務では断面性能を10〜30%低減して見込むことがある)、節による寸法調整係数、含水率による低減、横座屈、めり込み、歩行時の振動も考慮していない。ヤング係数Eは法令に規定がなく日本建築学会『木質構造設計規準・同解説』の基準弾性係数に基づく標準値を使っているため、県産材のスパン表(実測値を安全側に丸めている)とは結果が食い違うことがある。実際の断面決定は建築基準法に基づく構造計算と、構造設計者・建築主事の確認によること。

PR

📘 木造の構造設計を学ぶ

関連ツール

梁せい、結局いつも「210か240」で出していないか

木造の梁伏図を描くとき、梁せいをどう決めているか。スパン表のPDFを開き、910mmと1820mmの列を見比べ、間の値なら安全側に一段上を取る——多くの現場はこれで回っている。それ自体は間違っていない。ただ、その表が決して書いてくれないことが一つある。「その梁せいは、何で決まったのか」だ。

曲げで決まったのか、せん断で決まったのか、たわみで決まったのか。ここが分からないと、210を180に落とせるかどうかの判断ができない。落とせない理由がたわみなら、強度の高い樹種に替えても効かない。逆に曲げで決まっているなら樹種を替えるだけで一段落ちることがある。表は結果だけを返すので、結局「まあ210で」と丸めることになる。しかも負担幅が1365mmのような中間値だと、表の行を読み替える手間がそのまま毎回発生する。

このツールは、スパン・負担幅・樹種・梁幅を入れると、候補せい13種(105〜450mm)を下から順に当てて、曲げ・せん断・たわみの3検定をすべて通る最小の梁せいを返す。あわせて「たわみ支配・常時(G+P)・検定比0.86」のように、何で決まったのか・余裕がどれだけあるのかまで出す。表を引くのではなく、表の裏側を見るための道具だ。

なぜ作ったのか — スパン表が答えてくれない2つのこと

木造のスパン表は、北海道立林産試験場「木造建築のためのスパン表」をはじめ、群馬県林業試験場や奈良県森林技術センターなど各地の公的機関がPDFで公開している。どれも丁寧な資料で、実務で使えるだけの根拠が付いている。それでも使っていて詰まる場面が2つあった。

1つめは、表が「離散点の集合」でしかないこと。スパンも負担幅も910/1820刻みで並んでいるので、実際の割付が1365mmだったり、スパンが4200mmだったりすると読み替えが要る。安全側に丸めれば済む話ではあるが、丸めた分がどれくらい効いているのかは表からは見えない。結果、必要以上に大きいせいを出し続けることになる。

2つめは、表に支配要因が書いていないこと。梁せいを1ランク落とせるか、樹種を替えれば効くのかは「何で決まったか」を知らないと判断できない。たわみで決まっているならヤング係数Eか梁せいで効かせるしかなく、基準強度の高い材に替えても無駄になる。この情報が抜けているせいで、判断が「経験」に丸投げされていた。

そして調べていくうちに、もっと厄介な事実にぶつかった。たわみ計算に不可欠なヤング係数Eは、建築基準法に規定がない。基準強度Fb・Fsは平成12年建設省告示第1452号で樹種グループごとに数値が決まっているのに、Eだけは告示に無いのだ。日本建築学会『木質構造設計規準・同解説』の基準弾性係数を採ればスギは7000N/mm²、一方で群馬県産スギ無等級材の実測をもとにしたスパン表はE50相当の3900N/mm²を使っている。たわみはEに反比例するから、同じスギ・同じ荷重・同じ断面でも、たわみが約1.8倍違う。県のスパン表と自分の計算が合わないとき、その原因の大半はここにある。

だから、ヤング係数を上書きできる入力欄を付けた。標準値で計算した結果と、県産材のE値を入れた結果を、同じ画面で並べて見られるようにする。「出典で答えが変わる」という構造を隠さずに見せることが、このツールの核だ。

木造の梁はどう決まるのか(木造 梁せい 計算の第一原理)

木造 梁せい 計算の出発点は「面荷重 × 負担幅」

床や屋根に載る荷重は、N/m²という「面あたり」の単位でやってくる。ところが梁は線状の部材なので、そのままでは計算できない。ここで登場するのが負担幅という考え方だ。

雨樋を思い浮かべると分かりやすい。1本の雨樋は、屋根全体の雨ではなく「自分の真上にある屋根の帯」の雨だけを受け持つ。両隣の樋との中間線までが自分の縄張りだ。梁もまったく同じで、両隣の梁との中間線までの幅——つまり左スパンと右スパンの平均——が負担幅Bになる。面荷重にBを掛ければ、梁1本あたりの線荷重w(N/mm)に化ける。

線荷重さえ出れば、あとは材料力学の教科書どおりだ。両端支持の単純梁に等分布荷重が載る、という最も基本的な形に落とし込む。

w  = (DL + LL) × B / 10^6      [N/mm]   面荷重[N/m²] × 負担幅[mm]
M  = w L² / 8                  [N·mm]   単純梁+等分布荷重の最大曲げモーメント(中央)
Q  = w L / 2                   [N]      支点位置の最大せん断力
Z  = b h² / 6                  [mm³]    矩形断面の断面係数
I  = b h³ / 12                 [mm⁴]    矩形断面の断面二次モーメント
σ  = M / Z         ≦ fb                 曲げの検定
τ  = 1.5 Q / (b h) ≦ fs                 せん断の検定(矩形断面は平均せん断応力の1.5倍)
δi = 5 w L⁴ / (384 E I)        [mm]     瞬時たわみ

Zはせいhの2乗、Iは3乗、たわみはIに反比例するのでせいの3乗に反比例する。梁せいを1.2倍にすると曲げ余力は1.44倍、たわみは約0.58倍まで減る。「たわみは梁幅より梁せいで効かせろ」と言われるのはこの指数差が理由だ。

曲げ・せん断・たわみ — 梁 スパン 決め方の3つの関門

なぜ3つとも検定するのか。壊れ方が3種類あるからではなく、支配する領域がスパンによって入れ替わるからだ。

曲げモーメントはLの2乗、たわみはLの4乗に比例して増える。一方せん断力はLに比例するだけだ。だから長いスパンではたわみが真っ先に効き、短いスパンではせん断だけが取り残されて支配に回る。木造住宅の一般的なスパン(3〜5m程度)ではほぼ常にたわみ支配になるが、L=900mmに負担幅3640mmといった短スパン・大負担幅の領域に入るとせん断が顔を出す。さらに積雪地の屋根では、短期荷重の割増が効いて曲げが支配になる場合もある。この3領域を1本の判定に統合できないから、3つとも計算して最大値を見るしかない。

無等級材 とは — 樹種グループで基準強度が決まる

製材にはJASの目視等級区分材・機械等級区分材があるが、実際に流通している構造材の多くは等級の格付けを受けていない。これを無等級材と呼ぶ。無等級材の基準強度は平成12年建設省告示第1452号 第五号で樹種グループごとに定められていて、個体の良し悪しではなくグループ単位の値を使う。

樹種・材料曲げ基準強度 Fbせん断基準強度 Fsヤング係数 E(標準値)
スギ(無等級材)22.21.87000
ベイツガ(無等級材)25.22.18000
ヒノキ(無等級材)26.72.19000
カラマツ(無等級材)26.72.19000
ベイマツ(無等級材)28.22.410000
構造用集成材 E105-F30030.03.610500

単位はいずれもN/mm²。ヒノキとカラマツの数値が同じなのは誤記ではなく、告示1452号が「からまつ、ひば、ひのき、べいひ、べいひば」を同じ区分にまとめているからだ。同じ区分にいる限り、法令上は同じ強度として扱われる。

そして表の右端、ヤング係数Eの列だけが法令由来ではない。これは日本建築学会の基準弾性係数に基づく標準値で、告示に該当する規定は存在しない。だからこのツールでは上書きできる入力にしてある。

長期許容応力度は基準強度の1.1/3(令89条)

基準強度Fはそのまま使わない。建築基準法施行令第89条が、長期は基準強度の1.1/3、短期は2/3と定めている。スギのFb=22.2なら長期許容曲げ応力度は22.2 × 1.1/3 = 8.14N/mm²だ。3で割っているのが安全率で、そこに長期は1.1、短期は2という荷重継続時間の係数が掛かっている。木材は同じ応力でも長く載せ続けるほど壊れやすい(クリープ破壊)ので、長期側を厳しく取っているわけだ。

多雪区域ではさらに但し書きが効いて、積雪時の長期は1.3倍(1.43/3)、積雪時の短期は0.8倍(1.6/3)に補正される。雪は「短期だが、他の短期荷重より長く載り続ける」という中間的な性格を持つので、専用の係数が用意されている。

梁せいを間違えると現場で何が起きるか

木造の梁は、曲げで折れる前にたわみで使い物にならなくなる。これが鉄骨や鉄筋コンクリートと決定的に違うところだ。

たわみが過大になると、まず建具に出る。引き戸が中央で重くなる、開き戸の隙間が上下で不揃いになる、といった建て付け不良だ。梁が数mmたわむだけで枠の直角は崩れる。次に床鳴りが出る。根太と大引の当たりが変わって、歩くたびに擦れる音になる。天井を張っていればボードの継ぎ目に割れが走る。どれも構造的には壊れていないのに、住み手からは明確な不具合として申告される種類の症状だ。

しかもこれは施工直後には出にくい。木材はクリープで時間とともにたわみが増えるので、竣工時には目立たなかった変形が1〜2年で顕在化する。建築基準法施行令第82条第四号を受けた平成12年建設省告示第1459号が、木造の横架材について瞬時たわみに変形増大係数2を乗じた値がスパンの1/250以下であることを求めているのは、まさにこの経年増分を織り込むためだ。瞬時たわみでL/250に収めるのでは足りず、その倍で見なければならない。逆に言えば、瞬時たわみだけを見て「L/250以内だから大丈夫」と判断すると、実質的に2倍の変形を許してしまうことになる。

積雪の見落としはもっと危ない。多雪区域では令82条の荷重組合せで積雪の7割が長期側に算入される(G+P+0.7S)。垂直積雪量100cm・単位荷重30N/m²/cmなら積雪荷重は3000N/m²、その7割の2100N/m²が長期荷重に加わる。金属板葺きの屋根なら固定荷重はせいぜい500N/m²程度なので、長期荷重が5倍以上に膨れる計算だ。後述の多雪区域のケースでは、たわみの判定そのものが常時ではなく積雪時長期に移る。無雪地の感覚で断面を拾うと、雪の載る季節に変形が残る。

なお垂直積雪量は全国一律ではなく、令86条で特定行政庁が規則で定めることになっている。単位荷重も多雪区域では地域ごとに異なる。設計に入る前に建設地の値を建築主事に確認するのが前提だ。

図面を描く前の30秒で当たりを付ける

プラン検討中の梁伏図。間取りがまだ動く段階で、この位置に梁を飛ばして何せい要るのかを知りたい。スパン表を開いて読み替えるより、スパンと負担幅を打ち込んで結果を見るほうが速い。プランが動くたびに再計算できるのが効く。

リフォームで柱を抜く前。既存の柱を撤去すると、その上の梁のスパンが一気に伸びる。抜いた後のスパンと負担幅を入れて、今の梁せいで持つのか、持たないならどこまで必要かを先に見ておく。曲げは足りているがたわみだけ超えている、という結果が出れば、補強梁を抱かせるのか集成材に替えるのかという次の判断に進める。

見積り前の材の拾い出し。断面が決まらないと材積が出ない。概算段階で全スパンの梁せいをざっと当てておけば、木拾いの精度が上がる。樹種を振って比較すれば、材料費と断面の落としどころも見える。

垂木・根太のサイズ確認。垂木も根太も、力学的には「負担幅の狭い単純梁」でしかない。垂木の間隔455mmを負担幅として入れれば同じ計算で解ける。ただし並列して使う部材に認められる基準強度の割増(1.15倍)はこのツールでは見ていないので、その分だけ安全側の結果になる。

基本の使い方は3ステップ

1. 部位と樹種を選ぶ。小屋梁(瓦葺き・金属板葺き)か床梁(住宅の居室・事務室・店舗の売場)かを選ぶと、令84条の固定荷重と令85条の積載荷重が自動でセットされる。積載荷重は「大ばり、柱又は基礎の構造計算をする場合」の欄を使っている(床用の欄ではない点に注意)。部位を選ぶとたわみ制限の推奨値も切り替わり、そのあと自由に変更できる。樹種を選ぶと、その材のFb・Fs・標準Eが入力欄の近くに表示される。

2. スパン・負担幅・梁幅を入れる。スパンは支点間距離、負担幅は左右スパンの平均、梁幅は105/120/150/180から選ぶ。部位が小屋梁のときだけ垂直積雪量と区域(一般/多雪)の入力が現れる。荷重を自分で決めたいときは直接入力モードに切り替えて固定荷重・積載荷重をN/m²で打ち込む(このモードでは梁自重が自動加算されないので、固定荷重に含める)。ヤング係数の欄は任意で、空欄なら樹種の標準値が使われる。

3. 推奨梁せいと支配要因を読む。3検定をすべて満たす最小の梁せいと、何で決まったか(曲げ/せん断/たわみ)、支配した荷重ケース、3つの検定比、必要断面係数と必要断面二次モーメント、瞬時たわみと設計用たわみが表示される。候補最大の450mmでも成立しない場合は選定不可と表示され、打開策が注記として添えられる。シナリオプリセットが5件あるので、まずはそれを押して結果の読み方をつかむのが早い。

具体的な使用例 — 13ケースで挙動を確かめる

同じ床梁で樹種を振る(ケース1〜4)

ケース1: 在来住宅の2階床梁(スギ・基準ケース)

  • 入力: 床梁(住宅の居室)/スギ/スパンL=3640mm/負担幅B=910mm/梁幅b=105mm/たわみ制限L/250
  • 結果: 105×210。たわみ支配・常時(G+P)。検定比は曲げ0.41/せん断0.29/たわみ0.86。DL=400・LL=1300N/m²、w=1.547N/mm、M=2.56kN·m、Q=2.82kN。必要Z=315cm³に対し断面のZ=772cm³、必要I=6939cm⁴に対し断面のI=8103cm⁴。設計用たわみ12.5mm/許容14.6mm。
  • 解釈: 曲げは許容の4割しか使っていないのに、たわみは86%まで来ている。木造の梁がほぼ常にたわみで決まることを示す典型例だ。この状態で「強いスギ」を探しても意味がない。

ケース2: 樹種だけベイマツに替える

  • 入力: ケース1と同条件で樹種のみベイマツ
  • 結果: 105×180。たわみ支配・常時。曲げ0.44/せん断0.25/たわみ0.95。必要I=4857cm⁴、設計用たわみ13.86mm/許容14.56mm。
  • 解釈: 荷重は1mmも変わらない(w=1.547のまま)。Fb 22.2→28.2、E 7000→10000という材料定数の差だけで梁せいが1ランク下がった。ただし検定比0.95で余裕は小さい。仕口の断面欠損を見込むなら210のままにしておく判断もある。

ケース3: ヒノキ(=カラマツ)

  • 入力: ケース1と同条件でヒノキ
  • 結果: 105×210。たわみ支配・常時。曲げ0.34/せん断0.25/たわみ0.67。E=9000。
  • 解釈: 梁せいはスギと同じ210に落ち着くが、検定比が0.86→0.67に下がる。同じ断面でも安全余裕はまったく違う、ということが数字で見える。なおカラマツを選んでも結果は1フィールドも変わらない。告示1452号で同じ樹種区分に属するので、これは仕様どおりの挙動だ。

ケース4: ベイツガ

  • 入力: ケース1と同条件でベイツガ
  • 結果: 105×210。たわみ支配・常時。曲げ0.36/せん断0.25/たわみ0.75。E=8000。
  • 解釈: スギ(0.86)とヒノキ(0.67)の間に収まる。E=8000という中間値がそのままたわみ比に出ている。

同じ条件で樹種だけを振った結果をまとめると、木造の梁せいがどこで決まっているかがはっきりする。

樹種選定断面曲げせん断たわみ
スギ(E7000)105×2100.410.290.86
ベイツガ(E8000)105×2100.360.250.75
ヒノキ/カラマツ(E9000)105×2100.340.250.67
ベイマツ(E10000)105×1800.440.250.95

4樹種のうち3つが同じ210で、しかも動いているのはほぼたわみ比だけだ。ベイマツだけが180に落ちたのも、Fbが高いからではなくEが高いからである。

ヤング係数と材料を替える(ケース5〜7)

ケース5: ヤング係数を3900に上書きする

  • 入力: ケース1と同条件で、ヤング係数E欄に3900(群馬県産スギ無等級材のE50相当)
  • 結果: 105×270。たわみ支配・常時。曲げ0.25/せん断0.23/たわみ0.72。必要Iが6939→12455cm⁴に増える。
  • 解釈: 樹種はスギのまま、荷重も基準強度も同一。Eの出典を替えただけで210→270と2ランク上がった。県のスパン表と自分の計算が合わない理由の大半がこれだ。曲げ比が0.41→0.25に下がっているのは、たわみのために大きくした断面が曲げ側に余りまくっていることを意味する。

ケース6: 大開口リビングの床梁(集成材)

  • 入力: 床梁(住宅の居室)/構造用集成材E105-F300/L=4550mm/B=1820mm/b=120mm/L/300
  • 結果: 120×300。たわみ支配・常時。曲げ0.42/せん断0.23/たわみ0.84。DL=470(梁自重170を含む)・LL=1300、w=3.22N/mm、M=8.34kN·m。長期許容曲げは30.0 × 1.00 × 1.1/3 = 11.0N/mm²。設計用たわみ12.68mm/許容15.17mm。
  • 解釈: 梁せい300mm=30cmなので集成材の寸法係数は1.00、Fbは30.0のまま使われる。たわみ制限を厳しめのL/300に取っても120幅で収まっているのは、E=10500という高いヤング係数の効果だ。

ケース7: 集成材で5460mmを飛ばす

  • 入力: 床梁(住宅の居室)/構造用集成材E105-F300/L=5460mm/B=1820mm/b=150mm/L/250
  • 結果: 150×300。たわみ支配・常時。曲げ0.49/せん断0.22/たわみ0.96。設計用たわみ21.04mm/許容21.84mm。
  • 解釈: 5.46mのスパンでも150×300で成立する。ただしたわみ比0.96は余裕小の領域で、実施設計に進めるなら330を検討したいところ。せん断が0.22しか使われていないのは、集成材のFs=3.6が無等級材の倍近いためだ。

積雪とせん断 — 支配要因が入れ替わる(ケース8〜10)

ケース8: 一般区域で積雪80cm(曲げ支配になる)

  • 入力: 小屋梁(瓦葺き)/スギ/L=3640mm/B=1820mm/b=105mm/垂直積雪量80cm・一般区域/L/150
  • 結果: 105×180曲げ支配・積雪時短期。曲げ0.91/せん断0.56/たわみ0.90。S=1600N/m²、M=7.66kN·m、必要Z=517cm³に対し断面のZ=567cm³。
  • 解釈: 13ケース中で唯一、曲げが支配に回ったケースだ。一般区域では積雪は短期荷重としてのみ検定され、長期のたわみには含まれない。だから常時ケース(q=940)でたわみを見つつ、積雪時短期ケース(q=2540)で曲げを見る、という二系統の判定になる。曲げ0.91とたわみ0.90が拮抗しているので、条件が少し動けば支配要因が入れ替わる領域でもある。

ケース9: 多雪区域で積雪100cm(積雪時長期が支配)

  • 入力: 小屋梁(金属板葺き)/カラマツ/L=3640mm/B=1820mm/b=120mm/垂直積雪量100cm・多雪区域/L/150
  • 結果: 120×240。たわみ支配・積雪時長期(G+P+0.7S)。曲げ0.64/せん断0.54/たわみ0.72。S=3000N/m²、w=6.37N/mm、M=10.55kN·m、Q=11.59kN。
  • 解釈: 生成される荷重ケースは3つ——常時q=500、積雪時長期q=2600、積雪時短期q=3500。屋根自体は薄鉄板葺きで軽い(DL=500)のに、雪の7割が長期に算入されることで長期荷重が5倍以上になる。結果としてたわみ判定が常時ではなく積雪時長期で行われ、支配ケース表示もそれを反映する。無雪地の感覚で断面を決めてはいけない理由がこれだ。

ケース10: 短スパン・大負担幅でせん断が支配

  • 入力: 床梁(住宅の居室)/スギ/L=900mm/B=3640mm/b=105mm/L/250
  • 結果: 105×105せん断支配・常時。曲げ0.40/せん断0.57/たわみ0.41。w=6.188N/mm、M=0.63kN·m、Q=2.78kN。
  • 解釈: 負担幅が3640mmもあるので線荷重はケース1の4倍だが、スパンが900mmしかない。曲げはLの2乗、たわみはLの4乗で急減する一方、せん断力はLに比例するだけなので取り残される。3検定のうちせん断が支配に回る唯一の領域がここだ。仕口で断面が欠損すればせん断余裕はさらに削られるので、この領域では検定比0.57でも安心しないほうがいい。

荷重を変える・成立しない(ケース11〜13)

ケース11: 店舗の売場(積載2400)

  • 入力: 床梁(店舗の売場)/スギ/L=3640mm/B=1820mm/b=150mm/L/300
  • 結果: 150×300。たわみ支配・常時。曲げ0.46/せん断0.47/たわみ0.81。LL=2400N/m²、q=2800N/m²、w=5.096N/mm。
  • 解釈: 令85条の積載荷重は住宅の居室1300に対し店舗の売場2400。面荷重の合計では1700→2800と約1.6倍になり、梁幅を150に上げてもせいは300が要る。曲げ0.46とせん断0.47がほぼ並んでいるのも、荷重が重い床の特徴だ。

ケース12: 荷重を直接入力する

  • 入力: 床梁/スギ/L=3640mm/B=910mm/b=105mm/直接入力モードで固定荷重500・積載荷重1300/L/250
  • 結果: 105×210。たわみ支配・常時。曲げ0.43/せん断0.31/たわみ0.91。q=1800N/m²、w=1.638N/mm。
  • 解釈: 直接入力モードでは梁自重が自動加算されないので、自分で固定荷重に含める必要がある。ここでは500としたのでケース1(400)より重い。q=1800はプリセットの1700より5.9%重いが、選定される梁せいは同じ210だ。候補せいが離散である以上、荷重の小さな差はランクに現れず検定比だけが0.86→0.91に上がる。この「差が見えるのは検定比のほう」という感覚は、表を引いているだけでは身に付かない。

ケース13: ガレージの大スパン梁(選定不可)

  • 入力: 床梁(住宅の居室)/スギ/L=5460mm/B=2730mm/b=105mm/L/300
  • 結果: 選定不可。候補最大の105×450でも曲げ0.62/せん断0.63/たわみ1.10。必要I=87782cm⁴に対し105×450のIは79734cm⁴で届かない。
  • 解釈: 曲げもせん断も6割しか使っていないのに、たわみだけが超過している。打開策は3つあり、それぞれ検算済みだ。(a) 梁幅を150に上げると150×420で成立する(たわみ比0.948)。(b) 樹種を構造用集成材E105-F300に替えると、幅105のままでも105×420で成立する(たわみ比0.903)。(c) 中間に柱を立ててスパンを縮める——たわみはLの4乗に比例するので、スパンを2割詰めるだけでたわみは約4割まで落ちる(0.8の4乗 = 0.41)。空欄を返して終わりにせず、どの方向に動かせば効くかまで出すようにした。

仕組み — 13種の候補せいを昇順に当てて全検定を通す

なぜ「候補せいを下から全部当てる」のか

必要断面係数Z_reqと必要断面二次モーメントI_reqから梁せいを逆算し、流通寸法に丸める、という実装も考えた。式としてはそのほうが短い。ただしこの方法だと、曲げから出たせい・せん断から出たせい・たわみから出たせいの3つを最後に統合することになる。そして統合した瞬間に「どれが効いたのか」が曖昧になる。丸め方によっては、逆算では曲げが最大だったのに実際の丸め後断面ではたわみのほうが厳しい、という逆転も起こる。

このツールが返したいのは断面だけでなく支配要因なので、逆算はやめた。候補せい13種を昇順に走査し、各候補で3検定をすべて実際に計算して、全部が1.0以下になった最初のせいを採る。採用した断面そのもので出た検定比を比べるから、支配要因は定義どおりに一意で決まる。候補が13個しかないので総当たりでも計算量は問題にならない。

荷重ケースは令82条の組合せで作る

積雪の扱いは「長期と積雪時の厳しい方を取る」といった曖昧な処理にせず、令82条の荷重組合せに従って明示的にケースを並べる。一般区域なら常時と積雪時短期の2ケース、多雪区域なら常時・積雪時長期・積雪時短期の3ケースだ。各ケースは荷重qと、令89条の許容応力度係数kと、たわみ判定に使うかどうかのフラグを持つ。

// 1. 荷重ケースを作る(令82条の組合せ・令89条の係数)
type LoadCase = { id: string; q: number; k: number; forDeflection: boolean };
const cases: LoadCase[] = [{ id: "normal", q: DL + LL, k: 1.1 / 3, forDeflection: true }];
if (snow > 0 && zone === "heavy") {
  cases.push({ id: "snowLong",  q: DL + LL + 0.7 * snow, k: 1.43 / 3, forDeflection: true });
  cases.push({ id: "snowShort", q: DL + LL + snow,       k: 1.6 / 3,  forDeflection: false });
} else if (snow > 0) {
  cases.push({ id: "snowShort", q: DL + LL + snow,       k: 2 / 3,    forDeflection: false });
}

// 2. 候補せいを昇順に当て、3検定がすべて 1.0 以下になる最初の h を採る
for (const h of [105, 120, 150, 180, 210, 240, 270, 300, 330, 360, 390, 420, 450]) {
  const Z = (b * h * h) / 6;
  const I = (b * h * h * h) / 12;
  const fb0 = Fb * (isGlulam ? sizeFactor(h) : 1);
  const bending = Math.max(...cases.map((c) => momentOf(c) / Z / (fb0 * c.k)));
  const shear = Math.max(...cases.map((c) => (1.5 * shearOf(c)) / (b * h) / (Fs * c.k)));
  const defl = (2 * 5 * wDefl * L ** 4) / (384 * E * I) / (L / n);
  if (bending <= 1 && shear <= 1 && defl <= 1) return { h, bending, shear, defl };
}

たわみに使う荷重は、forDeflection が真のケースのうちqが最大のものを選ぶ。多雪区域で積雪があれば積雪時長期、それ以外は常時だ。一般区域の積雪を長期側に入れないのは、令82条の組合せがそうなっているからで、ケース8の「たわみは常時で、曲げは短期で決まる」という一見ねじれた結果はここから出ている。

係数が正しいことを公表値で突合した

1.1/3・1.43/3・2/3・1.6/3という係数は、条文を読めば書けてしまう。だからこそ、書けたものが実際の設計値と一致するかを別ソースで確認した。北海道立林産試験場のスパン表 表10には、樹種・等級ごとの許容曲げ応力度が長期/積雪時長期/積雪時短期の3列で載っている。

  • べいまつ1級: 12.5 / 16.3 / 18.2 N/mm² → 逆算するとFb ≒ 34.2で3列とも整合
  • すぎ1級: 9.9 / 12.9 / 14.4 N/mm² → 逆算するとFb ≒ 27.0で3列とも整合

いずれも本ツールの実装と同じ係数を掛けた値と一致した。せん断(0.7 / 0.9 / 1.0)や集成材の値も同様に突き合わせている。基準強度そのものも告示原文PDFと法令集追補の2ソースで照合し、集成材の寸法係数は日本集成材工業協同組合の公表表と林産試スパン表 表8の2ソースで9区分すべての一致を確認した。定数を1つ打ち間違えるだけで全ケースが静かにずれるので、この突合は実装より先にやっている。

集成材だけは梁せいで基準強度が変わる

構造用集成材には寸法効果がある。断面が大きいほど、内部に弱点を含む確率が上がって見かけの強度が下がる。集成材の日本農林規格 第5条 表18は、これを厚さ方向の辺長(=梁せい)に応じた係数として規定している。候補せい105〜450mmの範囲では1.08(105〜150mm)から0.96(310〜450mm)まで変わるので、曲げ基準強度をFb = 30.0 × 係数として候補ごとに計算し直す。梁せい300mmならちょうど係数1.00で、ケース6の長期許容曲げ11.0N/mm²はここから出ている。無等級材には寸法係数を掛けない。

計算例: 在来住宅の2階床梁

ケース1をステップバイステップで追うと、内部で何が起きているかが見える。

  1. 荷重を組む。床梁(住宅の居室)なので令84条から木造の床(板張・根太を含む)150 + 下階の天井150 = 300N/m²。これに床ばりの自重を張り間に応じて加算する(L=3640mmは4m以下なので100)。DL = 400N/m²。積載荷重は令85条の大ばり用で LL = 1300N/m²。合計 q = 1700N/m²。
  2. 線荷重に直す。w = 1700 × 910 / 10^6 = 1.547N/mm。
  3. 断面力を出す。M = 1.547 × 3640² / 8 = 2,562,141N·mm ≒ 2.56kN·m。Q = 1.547 × 3640 / 2 = 2815.5N ≒ 2.82kN。
  4. 許容応力度を出す。長期許容曲げ fb = 22.2 × 1.1/3 = 8.14N/mm²、長期許容せん断 fs = 1.8 × 1.1/3 = 0.66N/mm²。
  5. 必要断面性能を出す。Z_req = M / fb = 2,562,141 / 8.14 = 314,759mm³ = 314.8cm³。I_req は設計用たわみ2δiがL/250以下という条件をIについて解いて、I_req = 2 × 5 × w × L³ × 250 / (384 × 7000) = 69,391,330mm⁴ = 6939cm⁴。
  6. 候補を下から当てる。断面二次モーメントは h=105 で1013cm⁴、120で1512cm⁴、150で2953cm⁴、180で5103cm⁴と積み上がり、h=210で8103cm⁴。ここで初めて I_req = 6939cm⁴ を上回る。
  7. 採用断面で3検定を計算する。Z = 105 × 210² / 6 = 771,750mm³。σ = M / Z = 3.32N/mm²、曲げ比 = 3.32 / 8.14 = 0.41。τ = 1.5 × 2815.5 / (105 × 210) = 0.192N/mm²、せん断比 = 0.192 / 0.66 = 0.29。δi = 5 × 1.547 × 3640⁴ / (384 × 7000 × 81,033,750) = 6.23mm、設計用たわみ 2δi = 12.47mm、許容 3640/250 = 14.56mm、たわみ比 = 0.86。
  8. 支配要因を決める。0.41/0.29/0.86 の最大はたわみ。よって「たわみ支配」、支配した荷重ケースは常時(G+P)。

各ステップの数値は結果欄にそのまま出るので、手計算や別ソフトと突き合わせて検算できる。合わないときに、荷重の組み方なのか許容応力度なのかヤング係数なのか、どこで食い違ったのかを切り分けられるようにするための構成だ。

スパン表PDFと自動計算ツール、それぞれの守備範囲

木造の横架材断面を調べようとすると、まず出てくるのは公的機関のスパン表PDFだ。北海道立林産試験場、群馬県林業試験場、奈良県森林技術センターなど、各地が独自に公開している。中身の品質は高い。県産材の実測ヤング係数を反映し、仕口・継手による断面欠損まで見込んだうえで表に落としてある。むしろ本ツールより厳密な部分がある。ただし前半で触れたとおり、表である以上は910/1820の刻みでしか読めず、結果だけがあって理由が書かれていない。

Webで動く自動計算のほうは、驚くほど少ない。木造の梁を正面から扱うものは「きいぷらん」くらいで、あとは鉄骨やRC向けの汎用構造計算ソフトに行き着く。数万円のソフトを買うか、PDFの表を印刷して赤ペンで補間するか——その中間がほとんど空白地帯になっている。

本ツールが上乗せしているのは3点だけだ。負担幅1365mmのような表に無い中間値をそのまま計算できること。曲げ・せん断・たわみのどれで決まったか、さらに常時なのか積雪時なのかまで返すこと。そして樹種とヤング係数を振り替えて即座に比較できること。「梁せいを1ランク落とせるか」という現場の問いは、支配要因が見えないと立てようがない。

鋼材版の小梁・母屋・胴縁 断面選定ツールとは、入口が似ていて中身が別物だ。あちらはスパンと負担幅からH形鋼やリップ溝形鋼の最軽量断面を拾う鉄骨の話で、基準強度も許容応力度の考え方も別体系にある。木造は候補せいが13種の離散値しかなく、しかもほとんどの場合たわみで決まる。この性格の違いがそのままツールの分かれ目になっている。断面を決めた後に応力分布やたわみ形状を任意断面で細かく追いたいなら、汎用の梁シミュレーターのほうが向く。本ツールは「断面を決める」一点に絞ってある。

105・120・150…その刻みは尺貫法の名残

候補の梁せいは105、120、150、180、210…と並ぶ。整った30mm刻みに見えるが、これはメートル法の都合ではない。1寸=約30.3mmで、30mm刻みはほぼ1寸刻みなのだ。105mmは3寸5分、120mmは4寸、150mmは5寸。柱の「三寸五分角」「四寸角」という呼び名がそのまま梁幅に引き継がれている。製材所も流通も寸で動いていた時代の刻み幅が、SI単位に丸められた姿で生き残った形だ。

負担幅の910・1820も同じ出自を持つ。1尺=303mmで、3尺(半間)が909mm。これを丸めて910mmとし、その倍の1820mmが1間になる。畳の大きさも合板の3×6版(910×1820)も同じ寸法体系の上にあって、日本の木造はいまだにこのグリッドで組まれている。近年はメーターモジュール(1000mm・2000mm)の住宅も増えたが、負担幅が1000mmになった瞬間に910mm前提の表は使えなくなる。任意の負担幅を入れられるツールが要る理由の一つがこれだ。

固定荷重の表を眺めていて面白いのは、令84条の瓦ぶきが「ふき土がない場合640」「ふき土がある場合980」と2行に分かれていることだ。かつての瓦屋根は、野地板の上に土を敷き、そこに瓦を置いて据わりを取っていた。この葺き土の分が340N/m²、屋根1m²あたりおよそ35kgにもなる。桟木に引掛けて釘やビスで留める現代の工法ではこの土が要らない。数字の差がそのまま工法の変遷を記録しているわけだ。古い瓦屋根の改修で「軽くなったぶん梁に余裕が出る」と言われるのは、この340N/m²が消えるからにほかならない。

樹種の呼び名にも独特のズレがある。ベイマツは英語だとダグラスファー、ベイツガはヘムロックで、どちらも植物学的にはマツでもツガでもない。輸入が始まったとき、見た目の近い和名を当てた名残だ。さらに告示1452号の樹種区分は「あかまつ・くろまつ・べいまつ」を同じグループに束ねている。市場では価格も用途もまったく別物として流通する材が、基準強度の上では同じ数字を持つ。樹種名で材を選ぶ感覚と、告示の区分で強度を引く感覚は、頭のなかで別々に持っておいたほうがいい。

梁せいを詰めるときの勘どころ

  • たわみ支配ならヤング係数と梁せいで効かせる: 木造の梁はほとんどの場合たわみで決まる。たわみは断面二次モーメントに反比例し、Iはせいの3乗に比例するので、せいを1ランク上げる効きが圧倒的に大きい。逆に、基準強度Fbの高い樹種に替えてもヤング係数Eが上がらなければたわみはほとんど改善しない。無等級材から構造用集成材への変更が効くのは、FbよりEが7000から10500へ上がるからだと考えたほうが実態に合う。

  • 負担幅は左右スパンの平均で取る: 梁の間隔が均等でない場合、その梁が受け持つのは左隣との中間から右隣との中間まで。つまり(左スパン+右スパン)÷2 が負担幅になる。端部の梁は片側しか受けないので隣接間隔の半分だ。ここを取り違えると荷重が丸ごと2倍ずれる。

  • 仕口の欠損を見込むなら検定比0.8で止める: 本ツールは無欠損の矩形断面で計算している。渡りあごや大入れで断面が削られる位置では、実際の断面性能はこれより低い。県のスパン表は片側10%・両側20%といった低減を見込んでいる。プランが固まっていない段階なら、検定比0.8前後で止めておくと後で慌てずに済む。0.95を超えると余裕が小さい旨の注意が表示されるので、それも目安にしてほしい。

  • 小屋梁のL/150は天井仕上げ次第で締め直す: L/150は慣行値で、告示が明示しているのは床ばりの1/250だけだ。石膏ボード+クロスの天井や、野地の波打ちが見えてしまう勾配天井の構成なら、L/250やL/300に締めておくほうが手戻りが少ない。たわみ制限は部位を選ぶと推奨値が入るが、その後は自由に変えられる。

よくある質問(FAQ)

県の横架材スパン表と答えが違うのはなぜか

理由は主に2つ。1つはヤング係数Eの取り方だ。県のスパン表は県産材の実測データをもとに安全側へ丸めた値を使う。群馬県産スギ無等級材ならE50相当の3900N/mm²で、本ツールが標準値としている7000N/mm²の半分近い。たわみはEに反比例するので、この差だけで梁せいが1〜2ランク動く。もう1つは断面欠損だ。県のスパン表は仕口・継手による欠損(片側10%・両側20%など)を見込んで断面性能を下げているが、本ツールは無欠損の矩形断面で計算している。県の表に寄せたければ、ヤング係数E欄にその表が採用している値を入れて再計算してほしい。使用例のE上書きのケースが、まさにこの比較にあたる。

垂木や根太もこれで計算できるか

できる。垂木も根太も「負担幅の狭い梁」であって、面荷重×負担幅で線荷重にして曲げ・せん断・たわみを見る流れは梁と変わらない。垂木間隔455mmなら負担幅455mm、というように部材間隔をそのまま負担幅に入れればいい。ただし本ツールの負担幅の下限は455mmなので、303mm間隔の根太のようにそれより狭い場合は455mmで入れて安全側に見ることになる。もう1点、平12建告1452号は「たる木、根太その他荷重を分散して負担する目的で並列して設けた部材」の曲げ基準強度を1.15倍(構造用合板等の面材を張る場合は1.25倍)できると定めているが、本ツールはこの並列材の割増を見ていない。垂木・根太に使うと実際より少し厳しい結果が出る、と理解しておいてほしい。

ヒノキとカラマツで結果がまったく同じになるのはなぜか

前半の基準強度の表で触れたとおり、告示1452号がこの2つを同じ樹種区分に入れているためだ。本ツールはヤング係数の標準値も同じ9000N/mm²に揃えているので、樹種を切り替えても結果が1フィールドも動かない。不具合ではなく仕様で、選択中はその旨の注記も表示される。実材のヒノキとカラマツでは平均的なE値も比重も違うから、手元の材のデータがあるならヤング係数E欄で上書きして差を確かめてほしい。

構造用集成材のせん断基準強度3.6N/mm²はどこから来ているのか

平成13年国土交通省告示第1024号の、ラミナ樹種別の表からだ。3.6N/mm²は「ひのき、ひば、からまつ、あかまつ、くろまつ、べいひ、ダフリカからまつ、サザンパイン、べいまつ」などのラミナを積層方向にせん断する場合の値で、集成材であれば何でも3.6というわけではない。スギラミナの集成材は2.7N/mm²と2割以上低い。国産スギ集成材を使う予定なら、本ツールのせん断検定比は実際より甘く出ることになる。せん断が支配要因に回るのは短スパン・大負担幅の領域に限られるが、その領域に入ったときは意識しておきたい。

胴差や連続梁、柱直下の集中荷重は扱えるか

扱えない。本ツールが解くのは単純梁(両端支持)+等分布荷重に限られる。連続梁、片持ち梁、小屋束や上階の柱が乗る集中荷重は対象外だ。胴差については、床荷重に加えて外壁の固定荷重が乗るため部位プリセットには入れていない。令84条の壁の単位荷重を一次資料で確認しきれず、推定値を書くのを避けた結果だ。どうしても当たりを付けたい場合は、荷重の指定を「直接入力」に切り替え、床の固定荷重に外壁分と梁自重を足した値を入れれば近い評価はできる。集中荷重が主体の梁や連続梁は、汎用の梁シミュレーターや構造計算ソフトの領分になる。

入力した数値はどこかに送信されるのか

されない。計算はすべてブラウザの中で完結していて、スパン・負担幅・樹種・荷重といった入力値がサーバーに送られることはない。物件の寸法をそのまま打ち込むことになるツールなので、この点は設計の前提に置いている。結果をコピーする機能もクリップボードに書き出すだけで、外部への通信は伴わない。社内の検討中プランでも気兼ねなく入れてほしい。

まとめ

木造の梁せいは、スパンと負担幅と樹種と荷重が決まればほぼ機械的に決まる。それでも時間を食うのは、表を探して開く手間と、表に無い条件を読み替える判断と、「何で決まったのか」が最後まで見えないことが原因だった。曲げ・せん断・たわみの3検定を候補せい13種すべてに当てて、成立する最小のせいと支配要因を返す——それだけで、梁伏図の当たり付けは数十秒で片づく。あとは構造設計者の検討に渡せばいい。

関連するツールもあわせてどうぞ。

計算の前提や樹種の追加について気づいた点があれば、お問い合わせページから聞かせてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。在来住宅の梁伏図を描くたびにスパン表PDFを開き直していたので、支配要因まで返す選定ロジックを自分用に組んだのがこのツールの出発点。ヤング係数Eに法令上の規定がないと知ったときが、いちばん驚いた。

運営者情報を見る

© 2026 木造 梁せい・スパン選定ツール