タッピンねじ 引抜き強度・締付トルク計算

薄板鋼板・アルミ・樹脂・木材にねじ込んだタッピンねじの引抜き耐力を相手材ごとの規格式で出し、「締めすぎてバカになる」トルク上限が相手材とねじ本体のどちらで決まるかまで判定する

相手材(薄板金属・樹脂・無垢材・木質ボード)とねじの呼び・ねじ込み深さから、タッピンねじの引抜き耐力と「締めすぎてバカになる」トルク上限を計算する。上限が相手材のねじ山とねじ本体のどちらで決まるかまで判定する。

相手材

系統ごとに使う規格式が変わる。薄板金属=AISI S100、無垢材・木質ボード=Wood Handbook、樹脂=ねじ山せん断。

ねじ

呼びは ISO 1478 / JIS B 1007。旧番手(#8 など)を併記しているので、袋の表記でも図面の表記でも選べる。薄板では相手側の板厚 t2 がそのままねじ込み深さになる。

板の条件

t1 はねじ頭が接している側の板厚で、プルオーバーとせん断の計算に使う。頭部径を空欄にすると、なべ頭の目安として呼び径の1.9倍を使う(規格値ではないので、カタログの実寸を入れると精度が上がる)。

必要荷重

入れると合計許容耐力に対する安全率を判定する。1kgf ≒ 9.8N。

計算結果

合計許容耐力517 N1本合計 / 約 52.7 kgf
参考値

許容引抜き耐力(1本)

517 N

AISI Ω=3.00

合計許容耐力

517 N

1本 × 517 N ≒ 52.7 kgf

極限引抜き耐力

1,550 N

母材のねじ山が抜ける(Pnot)

せん断耐力 Pnv

3,076 N

AISI J4.3.1(傾き・支圧)。引抜きとの組合せ照査は規定なし

プルオーバー耐力 Pnov

3,247 N

頭が上板を突き抜ける側

推奨締付トルク

0.49 〜 0.69 N・m

保守側の目安。TD の実測が前提

トルク上限

0.98 N・m

相手材のねじ山が先に壊れる

ねじ切れトルク

3.02 N・m

これを超えるとねじが折れる(相手材によらない)

締付トルクの位置関係(N・m)

相手材のねじ山が壊れる範囲(縦線は代表値)推奨締付トルクねじ切れ0.000.821.632.453.27上限 0.98
推奨帯相手材のねじ山破壊ねじ切れ

かみ合いねじ山数

1.1 山

ピッチ 1.4 mm

下穴径の前提

2.95 〜 3.10 mm

谷径 〜 谷径×1.05。この範囲を外れると式の前提が崩れる

最小縁端距離 / 最小ピッチ

6.3 / 12.7 mm

AISI J4.2 / J4.1 の 1.5d / 3d。樹脂・木材でも割れ防止の下限目安として使える

式の出どころ: AISI S100-16 §J4(Pnot = 0.85·t2·d·Fu / Pnov = 1.5·t1·d'w·Fu / Pnv の3式)。許容は Ω=3.00 で除した値。頭側と相手側は同材と仮定している

締付トルクはあくまで目安。相手材にめねじを成形するトルク TD を実測せずに設定できるものではなく、業界の一次情報も「規格化することができない」としている。本ツールは推奨帯に代表値ではなく帯の下端を使い、意図的に保守側へ倒している。重要保安部位では実機での締付試験を行うこと。

出典: AISI S100-16 §J4 / Wood Handbook Ch.7 Fastenings / ねじ寸法は ISO 1478 Table 1(JIS B 1007 と IDT)

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手応えが急に軽くなる、あの一瞬に何が起きているのか

電動ドライバーでビスを締めていて、あと少しというところで手応えがふっと抜ける。増し締めしても空回りするだけで、ビスは頭が浮いたまま止まらない。板金カバーでも、樹脂の筐体でも、カラーボックスの棚受けでも、起きることは同じだ。現場では「バカになった」の一言で片付けられるが、あの瞬間に壊れているのはビスではない。相手材側に成形されたばかりのめねじが、らせん状にせん断されている

厄介なのは、この破壊が予告なしに全損することだ。ボルトの伸びのように途中で兆候が出ることはなく、ねじ山が飛んだ瞬間に引抜き耐力はほぼゼロまで落ちる。しかも見た目には締まっているように見えるので、そのまま出荷されて現場で外れる。

このツールは、その「飛ぶ寸前」がどこにあるのかを、相手材の材質・板厚・ねじ込み深さから逆算する。出すのは引抜き耐力だけではない。バカになるトルクの上限を決めているのが相手材なのか、それともねじ本体なのかという律速の判定まで出す。ここが分かれば、締付トルクを何 N・m に設定すべきかの議論が一段まともになる。

なぜ作ったのか — トルク表の数値は「ねじが折れない上限」でしかない

きっかけは、板金カバーのビスを規定トルクどおりに締めて、片っ端からバカにした失敗だ。使ったのはメーカーのカタログに載っている推奨締付トルク。番手(ST4.2=#8)も合っていた。それでも飛んだ。

理由は後から計算して分かった。メーカーが公表しているトルク表は、ねじ本体のねじり強さから決まる値であって、相手材のねじ山が耐えられる値ではない。ねじが折れるトルクは相手材が何であろうと変わらないので表にできるが、ねじ山が飛ぶトルクは相手材の材質と板厚で桁が変わるので表にできない。この2つは別物なのに、現場では前者の表が「締付トルクの推奨値」として流通している。

数字で見ると差は明白だ。ST4.2 のねじ切れトルクは、本ツールの推定で 3.02 N・m。相手材によらずこの値は動かない。ところが相手が SPCC 1.6mm なら、ねじ山が飛ぶ側の下限は 0.98 N・m。ねじ切れの3分の1以下で、先に相手材が壊れる。相手を SS400 3.2mm まで厚く・強くしてやっと 2.91 N・m となり、ねじ切れの 3.02 N・m とほぼ拮抗する。

つまり、薄板相手にトルク表どおり締めれば必ずバカになる。表が間違っているのではなく、表が答えている問いが違う。この構造的なズレを毎回手計算で埋めるのが面倒だったので、相手材側の限界とねじ側の限界を同時に出して小さい方を採るツールにした。どちらが効いているかを結果に明示するのは、そのためだ。

タッピンねじの引抜き強度とは — ねじ山せん断から考える

タッピンねじ 引抜き強度 の第一原理

タッピンねじが機械ねじ(ボルト+ナット)と決定的に違うのは、相手材にめねじが最初から存在しない点だ。下穴に押し込みながら、ねじ自身の山が相手材を削る/押し退けることでめねじを作る。だからボルトのように「規格どおりのめねじ強度」を前提にできない。めねじの品質は、下穴径・相手材の硬さ・ねじ込み速度に丸ごと依存する。

引き抜こうとする力がどこで受け止められているかを考えると、耐力の正体が見えてくる。ねじが相手材を掴んでいるのは、外径 d の円柱の側面だけだ。ロールケーキにストローを刺して引き抜くと、ストローの周りの円筒面に沿ってスポンジがちぎれる。あれと同じで、タッピンねじの引抜き破壊は直径 d・長さ Le の円筒面のせん断として起きる。

だから第一近似の耐力はこうなる。

せん断面積 As = π × d × Le
引抜き耐力  F  = C × せん断強度 × As

ねじ込みが深いほど(Le が大きいほど)強いのも、太いねじほど強いのも、この式が理由だ。ただし係数 C は 1.0 にはならない。ねじ山は連続した円筒ではなくらせん状の飛び飛びの帯なので、円筒面の全部が抵抗するわけではない。かみ合い率と、引張強さに対するせん断強度比の両方が効いてくる。

相手材によって支配則が入れ替わる理由

上の円筒せん断モデルがそのまま使えるのは、実は樹脂だけだ。相手材が変わると、壊れ方そのものが変わる。

  • 薄板金属: 板厚 1.6mm に対してピッチが 1.4mm なので、かみ合っているねじ山は 1山ちょっとしかない。円筒せん断ではなく、1山ぶんの山が板を引きちぎって抜ける形になる。さらに、ねじ側が耐えても**頭が上板を突き抜ける(プルオーバー)**という別の破壊モードが並走する。
  • 無垢材: 木は繊維の束なので、せん断強度という単一の値では表せない。実際の引抜き抵抗は摩擦成分が支配的で、円筒せん断モデルでは過小評価になる。しかも繊維に直交する側面と、繊維の端面である木口では抵抗が大きく違う。
  • 木質ボード: パーティクルボードや MDF は木片・繊維を接着剤で固めたもので、無垢材とも別の挙動を示す。表面近くは密度が高く芯は低いという密度勾配があるため、ねじ込みを深くしても比例して強くはならない。

このため本ツールは、系統ごとに確立された式を使い分けている。薄板金属は北米の冷間成形鋼構造規格 AISI S100-16 §J4、木質材は米国林産物研究所の Wood Handbook Chapter 7 Fastenings、樹脂だけは公的な実験式が存在しないので上の円筒せん断モデルに幅を持たせた形で使う。

ST4.2 と #8 は同じねじ — ISO 1478 の呼びと旧番手

もうひとつ、実務で毎回つまずくのが呼びの表記だ。図面には「ST4.2」、袋には「#8」、職人は「4mmのビス」と呼ぶ。これらは全部同じものを指している。

現行の呼びは ISO 1478(JIS B 1007 と一致)で、ST の後ろの数字が外径のミリ表記だ。旧番手との対応は以下のようになる。

ISO 1478 呼び旧番手外径 d (mm)谷径 (mm)ピッチ (mm)
ST2.9#42.902.081.1
ST3.5#63.532.511.3
ST4.2#84.222.951.4
ST4.8#104.803.431.6
ST5.5#125.463.991.8
ST6.3#146.254.701.8

ST4.2 の実外径が 4.22mm であって 4.20mm ではないのは、規格が d1 max として定めている値だからだ。本ツールは外径に d1 max、谷径に d2 min を使っている。0.02mm の差は耐力にはほぼ効かないが、下穴径を決めるときには効いてくる。

この数字を外すと現場で何が起きるか

薄板: 板厚が半分になると耐力も半分になる

AISI の引抜き式 Pnot = 0.85 · t2 · d · Fu は板厚 t2 に線形で効く。SPCC 1.6mm で極限耐力 1550N(許容 517N)だったものが、0.8mm では 775N(許容 258N)まで落ちる。板金カバーで「同じビスなのに薄い方だけ浮く」のはこれが理由だ。しかも 0.9mm を切ると規格式の適用も怪しくなるので、本ツールは極薄板では警告を出すようにしている。

樹脂: 締めた瞬間は持つのに、数日後に緩む

樹脂ボスは、締めすぎるとその場で割れるだけでなく、割れなくても後から緩む。ねじ山付近に降伏レベルの応力が残ると、クリープで応力が抜けて軸力が消えるからだ。ねじ込み深さがボス径に対して深すぎると、こんどは半径方向の応力でボスが縦割れする。本ツールが Le/d > 3 で警告を出すのはこのためだ。

木質ボード: 20kgf しか持たないものに 30kgf を掛けている

パーティクルボード(密度 0.70 g/cm³)に ST4.2 を 15.9mm ねじ込んだときの許容引抜き耐力は 201N、つまり 約20kgf でしかない。カラーボックスの棚受けが本を載せた程度で抜けるのは、この数字を誰も確認していないからだ。しかも木口(小口)に打つと係数そのものが小さくなり、さらに落ちる。

なぜ安全率 3.00 や 5.00 が必要なのか

AISI S100-16 は、ねじ接合部の許容応力度設計で Ω = 3.00 を要求している。ボルトの引張(Ω = 2.00 前後)と比べて明らかに大きい。理由は、タッピンねじの耐力が施工品質にそのまま依存するからだ。下穴が 0.2mm 太ければ耐力は落ちるし、斜めに入れば片当たりする。式が予測しているのは「正しく施工されたときの平均値」なので、施工ばらつきを安全率で吸収するしかない。

木質材の 5.00 はさらに事情が重い。Wood Handbook の引抜き式は 5〜10分で破壊に至る短期試験から得られた値だ。木材は荷重が長期間かかると耐力が下がる(クリープ破壊)ので、短期試験値をそのまま長期の許容値にはできない。

締めすぎと締め足りないの非対称性

最後に見落とされがちな点を書いておく。締め足りないと緩むのは直感的に分かる。しかし締めすぎても緩む。ねじ山が部分的に潰れると、その場では軸力が出ていても、振動や温度サイクルで潰れた部分が馴染んで軸力が抜けるからだ。しかも締めすぎ側は、潰した後に締め直しても回復しない。適正トルクの上下は対称ではなく、上に外す方が回復不能な失敗になる。

こんな場面で開く

板金カバーの固定本数を決めるとき。 カバー自重と風圧・振動から必要な引抜き荷重を出し、本数を変えながら安全率を見る。1本あたりの許容が分かれば、「4本で足りるか、6本要るか」の議論が感覚論ではなくなる。

樹脂筐体のボスを設計するとき。 ねじ込み深さを何 mm にすればいいか、ボス径に対して深すぎないかを、材質(PP / ABS / PC / POM / PA66 / ガラス繊維強化)ごとに確認できる。ガラス繊維強化材では律速がねじ本体側へ移ることがあり、その場合はボス設計よりねじの選定が先の問題になる。

木工の棚やウォールシェルフの耐荷重を見積もるとき。 樹種・ねじ込み深さ・側面か木口かを入れれば、ビス1本が長期でどれだけ持つかが出る。木口に打つと耐力が落ちることを、数字で確認できる。

既製品や協力会社の締付トルク設定値をレビューするとき。 設定値が推奨帯の中に入っているか、ねじ切れトルクに対してどのくらいの位置にあるかを、トルクバーの図で一目で確認できる。「相手材側とねじ側のどちらの限界に近いのか」が見えるので、レビューの指摘が具体的になる。

基本の使い方は3ステップ

1. 相手材の系統を選ぶ。 薄板金属 / 樹脂 / 無垢材 / 木質ボードの4択をセグメントから選ぶ。ここで使われる規格式が切り替わる。続けて材質を選ぶか、リストに無ければ強度(薄板は引張強さ、樹脂は引張強さ、木質は気乾密度)を直接入力する。

2. ねじの条件を入れる。 呼びは ISO 1478 の ST 表記に旧番手(#8 など)を併記してあるので、図面表記でも袋の表記でも選べる。ねじ込み深さは、薄板なら相手側の板厚 t2、樹脂・木材ならねじ部が入っている長さを入れる。薄板を選んだときは頭側の板厚 t1(プルオーバー計算用)も入力する。

3. 必要荷重を入れて安全率を見る。 必要引抜き荷重を入れると安全率と判定が表示される。空欄のままなら耐力の提示だけになる。結果には許容引抜き耐力・合計許容耐力・推奨締付トルク帯・トルク上限・ねじ切れトルク・かみ合いねじ山数・最小縁端距離とピッチが並ぶ。トルクバーの図では、推奨帯・相手材側の破壊トルク帯・ねじ切れトルクが同じ横軸に載るので、推奨帯がねじ切れのどのあたりにあるかが視覚的に分かる。

実際に計算してみた10ケース

以下はすべて実装済みのツールに同じ値を入力して得た出力だ。単位は耐力が N、トルクが N・m。

ケース1: SPCC 1.6mm × 上板 1.0mm × ST4.2(既定値)

  • 入力: 薄板金属 / ST4.2 / SPCC・SPHC(Fu=270) / ねじ込み 1.6mm / 上板 1.0mm
  • 結果: 極限引抜き 1550N、許容 517N、せん断 3076N、プルオーバー 3247N、トルク上限 0.98、ねじ切れ 3.02、推奨 0.49〜0.69
  • 解釈: 引張側の律速は引抜き(1550N < 3247N)。トルクは相手材律速で、ねじ切れ 3.02 の3分の1以下が上限になる。最も一般的な組み合わせでこの差が出る点が、このツールの出発点だ。

ケース2: 極薄 0.8mm SPCC

  • 入力: 薄板金属 / ST4.2 / SPCC / ねじ込み 0.8mm / 上板 0.8mm
  • 結果: 極限引抜き 775N、許容 258N、トルク上限 0.49、推奨 0.25〜0.34
  • 解釈: 板厚が半分になって耐力も推奨トルクもきれいに半分。0.9mm 未満なので実測推奨の警告が出る。この領域では手締めでも簡単に飛ばせる。

ケース3: SS400 3.2mm — 律速がねじ側へ反転する直前

  • 入力: 薄板金属 / ST4.2 / SS400(Fu=400) / ねじ込み 3.2mm / 上板 1.6mm
  • 結果: 極限引抜き 4591N、許容 1530N、トルク上限 2.91、ねじ切れ 3.02、推奨 1.45〜2.03
  • 解釈: 相手材側 2.91 とねじ切れ 3.02 がほぼ拮抗する境界ケース。ここまで厚く強い相手でようやくメーカーのトルク表が実態に近づく。逆に言えば、それ未満の板厚では表は使えない。

ケース4: 上板 0.5mm × 母材 3.2mm — プルオーバー律速

  • 入力: 薄板金属 / ST4.2 / SPCC / ねじ込み 3.2mm / 上板 0.5mm
  • 結果: 極限引抜き(律速値)1624N、許容 541N、せん断 1538N、プルオーバー 1624N、トルク上限 1.03、推奨 0.51〜0.72
  • 解釈: 母材が厚いのに耐力が伸びないのは、頭が上板を突き抜ける側で決まっているから。ねじを太くしても上板を厚くしない限り改善しない。ワッシャーを噛ませる判断はここで出る。

ケース5: SUS304 1.5mm × ST4.8 4本・必要 500N

  • 入力: 薄板金属 / ST4.8 / SUS304(Fu=520) / ねじ込み 1.5mm / 上板 1.2mm / 4本 / 必要荷重 500N
  • 結果: 極限引抜き 3182N、許容 1061N、合計許容 4243N、安全率 8.49(判定: 余裕あり)、トルク上限 2.29、ねじ切れ 4.75
  • 解釈: 合計 4243N は約 433kgf。安全率 8.49 は過剰に見えるが、Ω=3.00 を織り込んだ後の値なので、本数を減らす判断はここから始められる。

ケース6: PC ボス × ST3.5 ねじ込み 10mm

  • 入力: 樹脂 / ST3.5 / PC(σB 54.9〜64.7) / ねじ込み 10mm
  • 結果: 極限引抜き 2321N(帯 1826〜3014N)、許容 774N、トルク上限 0.97、ねじ切れ 1.86、推奨 0.48〜0.68
  • 解釈: 樹脂は個体差が大きいので帯で見る。下限 1826N と上限 3014N は 1.65倍の開きがあり、代表値だけを信じて設計すると危ない。許容 774N は下限側から見ても妥当な範囲に収まる。

ケース7: PA66-GF30 × ST4.2 ねじ込み 15mm — 律速がねじ側へ

  • 入力: 樹脂 / ST4.2 / PA66-GF30(σB 152〜193) / ねじ込み 15mm
  • 結果: 極限引抜き 12006N、許容 4002N、トルク上限 3.02、ねじ切れ 3.02、推奨 1.51〜2.12
  • 解釈: トルク上限とねじ切れトルクが同じ値になっている。相手材が強すぎて、先に折れるのはねじ本体側。ここまで来たら「もっと締められる」ではなく「これ以上はねじが折れる」と読む。Le/d = 3.55 でボス割れの警告も出る。

ケース8: スギ 30mm を3通り — 面とねじ種の効き

  • 入力: 無垢材 / ST4.2 / スギ(気乾密度 0.38) / ねじ込み 30mm
  • 結果: 側面×タッピンねじ 1646N(許容 329N)/ 側面×木ねじ 1496N(許容 299N)/ 木口×タッピンねじ 1234N(許容 247N)
  • 解釈: 同じ穴・同じ深さでも、ねじ種で約10%、面の向きで**25%**変わる。木口が弱いのは繊維の端面にねじ山が食い込むためで、Wood Handbook が側面の 75% と明記している。木口に打たざるを得ない設計は、この時点で見直す価値がある。

ケース9: ヒノキ 25mm × ST3.5 1本で 800N を持たせようとすると

  • 入力: 無垢材 / ST3.5 / ヒノキ(気乾密度 0.44) / ねじ込み 25mm / 1本 / 必要荷重 800N
  • 結果: 極限引抜き 1538N、許容 308N、安全率 0.38(判定: 耐力不足)
  • 解釈: 極限値だけ見ると 1538N > 800N なので持ちそうに見える。しかし長期許容は 308N(約31kgf)で、800N(約82kgf)には遠い。極限耐力と長期許容を混同すると、この判断を丸ごと間違える。本数を増やすか、ねじを太く・深くするか、樹種を変えるかの三択になる。

ケース10: パーティクルボード 15.9mm と MDF 木口 20mm

  • 入力A: 木質ボード / ST4.2 / 密度 0.70 / ねじ込み 15.9mm / 面
  • 結果A: 極限引抜き 1003N、許容 201N、トルク上限 0.63、推奨 0.32〜0.44
  • 入力B: 木質ボード / ST3.5 / 密度 0.75 / ねじ込み 20mm / 木口
  • 結果B: 極限引抜き 1130N、許容 226N、トルク上限 0.60、推奨 0.30〜0.42
  • 解釈: B は密度も深さも A より上だが、木口なので係数が下がり、許容は 226N と大差ない。木質ボードの木口は無垢材の 75% 低減とは別物で、式の係数そのものが入れ替わる。組立家具の側板に打つビスが弱いのは構造的な理由がある。

仕組み・アルゴリズム — 4つの式を使い分けた理由

統一式1本 vs 相手材別の実験式

設計の入口で二択があった。(a) ねじ山せん断面積 × せん断強度 の統一式1本で全材料を処理する案と、(b) 相手材ごとに確立された実験式を使い分ける案だ。

(a) は魅力的だった。式が1本なので実装も説明も簡単になる。しかし検証すると2方向に外れることが分かった。薄板金属では、板厚 1.6mm に対してピッチ 1.4mm なのでかみ合いが1山ちょっとしかなく、円筒せん断という前提自体が成り立たない。逆に木材では摩擦成分を丸ごと無視するため大幅な過小評価になる。同じ式で片方が過大、もう片方が過小に出るなら、係数調整で救える話ではない。

そこで (b) を採り、樹脂だけは公的な実験式が存在しないので (a) の統一式に幅を持たせた形で残した。

薄板金属: AISI の3つの破壊モード

薄板金属では、引張方向に2モード、せん断方向に3式が並走する。

引抜き   Pnot = 0.85 × t2 × d × Fu          (Eq.J4.4.1-1)
プルオーバー d'w  = min(dh, 19.1)
         Pnov = 1.5 × t1 × d'w × Fu         (Eq.J4.4.2-1)
引張耐力 = min(Pnot, Pnov)

せん断   r = t2 / t1
         a = 4.2 × √(t2³ × d) × Fu
         b = 2.7 × t1 × d × Fu
         c = 2.7 × t2 × d × Fu
         r ≦ 1.0  : Pnv = min(a, b, c)
         r ≧ 2.5  : Pnv = min(b, c)
         1.0 < r < 2.5 : 上2式を線形内挿
許容 = 耐力 / 3.00   (Ω = 3.00)

d'w に 19.1mm(3/4インチ)の上限があるのは、頭が大きくても板の面外変形で効かなくなるためだ。ケース4 でプルオーバー律速になったのは、この d'w が上限に達しないサイズで、上板だけが 0.5mm と薄かったからだ。せん断側の r による場合分けは、板厚比によって「上板が傾く」のか「支圧で潰れる」のか支配モードが変わることを表している。中間域を線形内挿するのは規格本文の規定どおりだ。

なお原文はインチ・ksi 系だが、この式群は力=長さ²×応力で次元が閉じているので、N・mm・N/mm² をそのまま代入して問題ない。係数の読み替えは不要だ。

木材の G 換算 — ここを間違えると32%ズレる

無垢材の式は Wood Handbook Eq.7-10a だ。

G = 気乾密度 / 1.15        ← ここが要
p = 108.25 × G² × d × Le
木口なら p ← p × 0.75
タッピンねじなら p ← p × 1.05〜1.16(代表 1.10)
許容 = p / 5.0

落とし穴は G の定義にある。Wood Handbook の G全乾重量を基準にした比重であって、日本で流通している「気乾密度(含水率15%)」とは 1.15 倍違う。そして p ∝ G² なので、気乾密度をそのまま代入すると 1.15² = 1.32、つまり約32%の過大評価になる。

これは机上の心配ではない。木材の引抜き計算を載せている解説をいくつか読むと、密度の定義に触れないまま数値だけ代入している例がある。32%の過大評価は安全率5.00をかなり食い潰す。本ツールはスギ 0.38、ヒノキ 0.44 のような日本で入手できる気乾密度の値を入力の前提にし、内部で 1.15 で割ってから式に入れている。

木質ボードは Eq.7-12 で、換算除数も係数も別物になる。

G   = 密度 / 1.08          ← ボードは含水率が低いので除数が違う
eff = Le − d/3
K   = 41.1(面) / 31.8(木口)
P   = K × √d × eff^1.25 × G²
許容 = P / 5.0

無垢材の木口が「側面の 0.75 倍」なのに対し、ボードの木口は係数 K そのものが 41.1 → 31.8 に入れ替わる。同じ「木口」という言葉でも扱いが違うので、ケース10 で結果が直感とずれる。

トルクモデルはなぜ帯の下端を推奨値に使うのか

トルク側は全系統共通で1モデルにした。

T_F_min = 0.15 × F_min × d / 1000   [N・m]
T_F_rep = 0.20 × F_rep × d / 1000
T_F_max = 0.25 × F_max × d / 1000
T_screw = 600 × π × dRoot³ / 16 / 1000
T_limit = min(T_F_min, T_screw)
推奨帯   = 0.5 × T_limit 〜 0.7 × T_limit

ここで意図的に保守側へ倒している点がふたつある。

ひとつは、推奨帯の基準に代表値 T_F_rep ではなく帯の下端 T_F_min を使っていること。T = K · F · d は予荷重ぶんのトルクしか見ておらず、ねじ込みが深いほど走行摩擦(ねじが進むあいだ回し続けるトルク)を取りこぼす。実際、Wood Handbook にはパーティクルボードのねじバカトルクの実測式 Eq.7-11a があり、密度 700 kg/m³ での実測が 9.88 N・m とされている。同条件で本ツールが出す推定は約11分の1で、11倍近い開きがある。

この差は欠陥ではなく、どちら側に外すかの設計判断だ。推奨トルクを小さめに出す方向のズレなので、締めすぎ防止という目的に対しては安全側に働く。だから帯の下端を採り、さらに 0.5〜0.7 倍する。なお Eq.7-11a 自体は計算エンジンには組み込んでいない。適用条件が「8番ねじ・ねじ込み 15.9mm・面から」に限定されており、条件を外れた入力で値を出すと誤誘導になるからだ。

もうひとつは T_screw の推定だ。JIS B 1055 が定める心部硬さ 270〜370 HV の下限側から σB ≒ 1000 MPa と置き、ねじり強さを T = 0.6 σB × π dRoot³ / 16 で求めている。この推定値をメーカーが公表している推奨締付トルク8サイズ突き合わせたところ、7サイズが公表帯の内側かつ下端寄りに収まった(出典の表は無断転載が禁じられているため、ここでは数値は示さない)。下端寄りに出るということは、こちらも保守側だ。

ケース1をステップごとに追う

最後に、ケース1(SPCC 1.6mm × 上板 1.0mm × ST4.2)を頭から追ってみる。

[ねじ寸法] ISO 1478 ST4.2 = #8
  d = 4.22 mm, dRoot = 2.95 mm, pitch = 1.4 mm

[相手材] SPCC: Fu = 270 N/mm², t2 = 1.6 mm, t1 = 1.0 mm

[引張]
  Pnot = 0.85 × 1.6 × 4.22 × 270        = 1549.6 N
  d'w  = min(1.9 × 4.22, 19.1)          = 8.018 mm
  Pnov = 1.5 × 1.0 × 8.018 × 270        = 3247.3 N
  耐力 = min(1549.6, 3247.3)            = 1549.6 N  → 引抜き律速
  許容 = 1549.6 / 3.00                  = 516.5 N

[トルク]
  T_F_min = 0.15 × 1549.6 × 4.22 / 1000 = 0.981 N・m
  T_screw = 600 × π × 2.95³ / 16 / 1000 = 3.024 N・m
  T_limit = min(0.981, 3.024)           = 0.981 N・m → 相手材律速
  推奨    = 0.5〜0.7 × 0.981            = 0.49〜0.69 N・m

[付随値]
  かみ合い山数 = 1.6 / 1.4 = 1.14 山
  最小縁端 = 1.5 × 4.22 = 6.33 mm / 最小ピッチ = 3 × 4.22 = 12.66 mm

かみ合いが 1.14 山しかないことに注目してほしい。薄板のタッピン締結は、この 1山ちょっとで全荷重を受けている。1山が潰れた時点で耐力が消えるという意味が、この数字を見れば実感できるはずだ。頭部径 dh を空欄にした場合は、なべ頭の目安として 1.9 × d を使っている。これは規格値ではなく既定値なので、カタログの実寸が分かるなら入力した方が精度は上がる。

静的な表しかない世界に、計算する側から入る

「タッピンねじ 締付トルク」で検索すると、上位はメーカーの技術資料でほぼ埋まる。鶴賀コーポレーションのネジログ、八幡ねじ、ウィルコ、池田金属工業、ヤマシナ。どれも情報の質は高く、下穴径表も推奨トルク表もきちんと整理されている。ただしすべて静的な表だ。呼び径とねじの種類を縦横に取った表であって、相手材が 1.6mm の SPCC なのか 10mm 深さの PC ボスなのかを入れて耐力を返してくれるものではない。2026年8月時点で「タッピンねじ 引抜き強度 計算 ツール」「タッピンねじ 締付トルク シミュレーター」のどちらで検索しても、自動計算するツールは1件も出てこなかった。

計算の考え方に踏み込んでいる資料はある。Vectrix「タッピンねじの締結トラブル110番」は、下穴にめねじを成形するトルク TD、めねじが壊れるトルク TF、その間に取る目標締付トルク TS という枠組みを明快に解説している。ただし値はトルクアナライザーでの実測が前提で、TD や TF を求める式そのものは示していない。「考え方はここ、値は自分で測れ」という構成。

そして池田金属工業のコラムは「締め付けトルクは規格化することができない」「破壊トルクの70〜80%を設定トルクにする方法は TD を無視していて不適切」とはっきり書いている。この指摘は正しい。本ツールも同じ立場で、出しているのは相手材側の限界から保守的に切り下げた目安帯であって、実測の代わりにはならない。前半で触れたとおり、カタログのトルク表が誤っているのではなく、見ている限界が違うだけ。

サイト内の役割分担も整理しておく。木工の下穴は木ネジ下穴径ガイドが寸法(下穴径・下穴深さ・縁端距離)を出すが、その穴に打ったねじが何 N で抜けるかまでは扱わない。そこを引き受けるのが本ツール。相手にめねじが規格どおり切ってある機械ねじへ置き換えるなら、必要ねじ込み深さを逆算するねじ込み深さ・ねじ山強度計算の担当に移る。タッピンねじは相手材にねじ山を成形する以上、有効ねじ山の数え方も許容値の桁も別物になるからだ。ねじの種類そのものを決めかねているならネジ・ビス選定ガイド、壁面取り付け全体の耐荷重を見るなら壁掛け耐荷重チェッカーが入口になる。

ST4.2 の「.2」はどこから来たのか

ST2.9、ST3.3、ST3.5、ST3.9、ST4.2、ST4.8。並べると刻みが妙に不規則だ。メートルねじの M3・M4・M5 のようにきれいな整数で揃わないのは、もとがインチ系の番手だから。

ISO 1478 の Table 1 には、各サイズに「Former thread designation(旧ねじ呼び)」の列があり、#0 から #20 までの番手が併記されている。番手はインチ寸法から決まった系列で、それを mm に換算して丸めた結果が 4.2 や 4.8 という半端な数字になった。日本のホームセンターの棚では mm 表記、輸入品のパッケージや樹脂部品の図面では番手表記が平然と混在するのはこの経緯による。ツールの呼びセレクトに旧番手を併記しているのも、手元のパッケージがどちらの表記でも迷わず選べるようにするため。

木材まわりにも面白い一節がある。Wood Handbook Chapter 7 がタッピンねじの引抜き抵抗を木ねじより高く見積もっているのは、ねじ山が鋭く、成形されるめねじが密になるぶん摩擦と支圧を稼げるからだ。しかもその比は材の密度で変わり、軽い材ほど差が小さく、密な材ほど大きくなる。無垢材を選んだときにねじの種類を切り替えられるようにしてあるのはこのため。

最後に材料規格から。JIS B 1055:2015 は熱処理タッピンねじの表面硬さを 450 HV0.3 以上、心部硬さを 270〜370 HV と規定している。表面は相手材を削れるほど硬く、芯はそれより軟らかく粘る。硬いだけのねじは相手材にめり込む前に折れるので、硬さを層で作り分けているわけだ。

現場で効くタッピンねじの締結Tips

木口には打たない。 無垢材の木口面は、ねじ山が繊維を沿って割り開く方向に働くので側面より確実に落ちる。木質ボードでは面と木口で使う係数そのものが別の値になる。棚受けやフレームで木口に打たざるを得ないときは本数で稼ぐか、ねじ込み深さを取れる部材へ逃がす。ツール上でねじ込む面を切り替えれば、低下の度合いはそのまま数字に出る。

下穴径は谷径を基準に考える。 呼び径(外径)ではない。Wood Handbook は無垢材の下穴を針葉樹で谷径の約70%、広葉樹で約90%としている。金属・樹脂では谷径〜谷径×1.05 が前提。ここを外すと計算式の前提そのものが崩れるので、出てくる耐力の数字も意味を失う。

電動ドライバーのクラッチは推奨帯の下端から。 上端に一発で合わせるのではなく、下端から始めて手応えを見ながら1段ずつ上げる。インパクトドライバーは打撃でトルクが跳ねるため、薄板と樹脂のタッピンねじには向かない。

同じ穴への再ねじ込みは耐力が落ちる。 一度成形しためねじの山を2回目で削り直すため。分解を前提とする部位ならインサートナットを検討するか、打ち直しは最小ピッチ(呼び径の3倍)以上ずらした新しい位置に取る。

縁端距離を切らない。 板端から呼び径の1.5倍を切ると、ねじ山が飛ぶ前に板のほうが裂ける。使用例で見たとおり耐力の計算値が足りていても、この寸法が確保できていなければ成立しない。

よくある質問

推奨締付トルクの通りに締めれば必ず大丈夫なのか

目安として使ってほしいが、保証値ではない。実際の締付トルクは、下穴にめねじを成形するトルク(TD)とめねじが壊れるトルク(TF)の間に取る必要がある。TD は下穴径・材質・ねじ形状・ねじ込み速度で変わるため、計算だけでは決まらない。本ツールが出しているのは TF 側の推定を保守的に切り下げた帯であって、TD は含んでいない。量産ラインの管理値を決めるなら、実物でトルクアナライザーの締付曲線を取るのが唯一の正解になる。

メーカーのカタログにある推奨トルクと値が違うのはなぜか

見ている限界が違う——なぜそうなるかは前半の「なぜ作ったのか」で詳しく書いた。本ツールの上限は「相手材のねじ山が先に飛ぶトルク」と「ねじ本体がねじ切れるトルク」の小さいほうで、どちらが小さいかは条件で入れ替わる。薄板や軟らかい樹脂では相手材側がはるかに手前に来るが、ガラス繊維強化ナイロンに深くねじ込む条件では逆転してねじ切れトルク側が上限になる(使用例の PA66-GF30 のケースがそれ)。カタログ値と食い違うこと自体は異常ではない。

樹脂や木材の結果が範囲で出るのはなぜか

材料のばらつきが桁で効くため、単一値で断定しない設計にしている。樹脂は成形条件と繊維配向、木材は産地・部位・含水率で強度が動き、同じグレード・同じ樹種でも2倍近い差が出ることがある。1つの数字を出すと、そこに存在しない精度があるように見えてしまう。だから極限耐力は下限〜上限の帯で示し、設計に使うのは代表値を安全率で割った許容値のほうにしている。薄板金属だけ帯を持たせていないのは、材料規格が引張強さの下限を保証しているから。

木材の気乾比重をそのまま入力してよいのか

そのままでよい。ハンドブックや樹種表に載っている気乾密度の値を入れれば、全乾重量基準の比重への換算はツール側で処理する。この換算は無視できない量で、木材の引抜き式が比重の2乗で効く以上、換算を飛ばすと耐力が3割ほど過大に出る。換算式の中身は前半の解説と仕組みのセクションで導出しているのでそちらを見てほしい。木質ボードは製品ごとに密度が違うので、板の仕様書に書かれた密度をそのまま入れる(kg/m³ 表記なら1000で割って g/cm³ にする)。

ST8 を選ぶと警告が出るのはなぜか

AISI S100 §J4 のねじ接合部の規定が、適用範囲を呼び径 2.03〜6.35mm(0.08〜0.25インチ)と明記しているため。ST8 は呼び径 8.00mm でこの上限を超えるので、計算自体は実行したうえで範囲外の外挿値である旨の注記が付く。式の形が急に破綻するわけではないが、規格が検証していない領域であることに変わりはない。重要な部位で使うなら実測か別の設計法で裏を取ってほしい。ST6.3(#14)以下であれば適用範囲に収まる。

入力した板厚や図面の寸法はどこかに送信されるのか

送信しない。相手材の材質、板厚、ねじ込み深さ、必要引抜き荷重、いずれもブラウザの中だけで計算していて、サーバーには一切送っていない。ページを開いた時点で読み込まれた JavaScript が端末上で実行されるだけなので、社外に出せない図面の寸法をそのまま入力しても外部に残らない。結果のコピー機能もクリップボードに書き込むだけで、通信は発生しない。

タッピンねじは「相手材の限界」から決める

タッピンねじの締結で最初に壊れるのは、たいていねじではなく相手材のねじ山のほう。だから設計の順番は、ねじの規格表を眺めるより先に「この板厚・この材質で何 N まで持つのか」「何 N・m で山が飛ぶのか」を出すほうが早い。相手材の系統・ねじの呼び・ねじ込み深さの3つを入れれば、許容引抜き耐力と締付トルクの上限、そして限界がねじと相手材のどちらで決まっているかまで一度に出る。

木工の下穴寸法から決めたいときは 木ネジ下穴径ガイド、機械ねじに置き換えて必要ねじ込み深さを逆算するなら ねじ込み深さ・ねじ山強度計算、ねじの種類そのものから選び直すなら ネジ・ビス選定ガイド、壁面への取り付け全体の耐荷重を見るなら 壁掛け耐荷重チェッカー が続きになる。

計算の前提や値の出どころで気になる点があれば、お問い合わせページから知らせてほしい。

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Mahiro

Mahiro Appの開発者。板金カバーのビスをメーカー推奨トルクどおりに締めて片っ端からバカにしたのが出発点。ねじが折れない上限と、相手材のねじ山が飛ぶ上限は別物だと気づいてから、相手材側の限界を先に出すようにした。

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