配管サポート間隔チェッカー

MSS SP-69 × JIS B 8607 × たわみ制約 の3系統同時判定

MSS SP-69 / JIS B 8607 / たわみ制約(δ=wL⁴/185EI)の3系統を同時比較し、最小値を推奨する配管サポート間隔シミュレーター。保温・流体重量も合算。

代表シナリオ

配管仕様

Do=114.3mm / Di=105.3mm / I=3.30e+6mm⁴ / E=205GPa

流体

保温仕様

計算結果

配管自重

12.20

kgf/m

流体重量

8.71

kgf/m

保温材重量

0.00

kgf/m

合計分布荷重 w

20.91 kgf/m

= 205.1 N/m

MSS SP-69

5.20

m

JIS B 8607

4.00

m

たわみ制約

7.78

m

推奨最大間隔4.00 m
OK

推奨時のたわみ: 0.42 mm(許容6mm)

※ 横引き配管を前提とした簡易計算(竪管・地震・衝撃・熱膨張・共振は対象外)。重要配管はMSS SP-58/SP-69原文とJIS B 8607、配管応力解析ソフトで検証すること。

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📘 配管支持・吊り金具の参考書籍と工具

関連ツール

配管が「ぐにゃり」とたわんで見えた現場

工場の改修現場を歩いていて、蒸気本管が支持金具の間で明らかに下に垂れ下がって見えた瞬間がある。手を当てるとほんのり温かく、保温巻きの継ぎ目がズレて影を作っていた。目視で分かるたわみは数十mm単位だ。3点連続支持の梁理論で許容するのはせいぜい L/360 = 6mm 前後。現場の目に「たわんで見えた」時点で、支持間隔は完全に設計範囲を超えている。

原因は単純で、「元の設計が水配管だった箇所を蒸気に転用した」結果、既設の吊りバンドが間隔そのままで残っていた。自重に保温材の重量が加わり、さらに配管中の凝縮水が満水状態に近づく区間で、構造的な余裕が食いつぶされていた。

配管サポートの間隔は、自重・流体・保温を合計した分布荷重使う規格(MSS SP-69/JIS B 8607)管材のヤング係数・断面二次モーメント の組合せで決まる。三つの要素をひとつでも落とすと、上の現場のような事態になる。このツールはその三つをまとめて取り込み、MSS/JIS/たわみ制約の3系統から最小値を推奨スパンとして返す。配管設計の現場で「これ、間隔決め直した方がいいよね?」の判断を、電卓ではなく1画面で完了させるのが狙いだ。

なぜ作ったのか

配管支持の間隔表は、実務者なら MSS SP-69(米国 Manufacturers Standardization Society の規格)や JIS B 8607 として見慣れているはず。だがこの二つ、表の数値が微妙にズレる。たとえば 100A の炭素鋼Sch40だと MSS は水満水で 5.2m、JIS は 4.0m を推奨する。さらに厄介なのは、どちらの規格も「標準的な条件」を想定した表引きで、保温重量や非標準流体は含まれないことだ。

既存の日本語Web電卓を探すと、MSS だけ、あるいは JIS だけを載せているものは見つかる。ただ 2 つを同時に並べて最小値を提示し、なおかつたわみ許容 L/360 の計算式を連立して第3の制約として加えるツールがなかった。自分で Excel を作っても、材質ごとにヤング係数・断面二次モーメントを表引きする手間が毎回発生する。

もう一つの不満は PVC 管の扱いだ。PVC は常温なら炭素鋼の計算式を流用できるが、40℃を超えると機械的強度が目立って落ちる。給湯配管や温泉施設の配管で、常温基準の表を鵜呑みにすると後で垂れる。既存ツールでこの短縮係数(0.7倍が慣行値)を自動で掛けてくれるものがほぼ無かった。

そこで、材質プリセット(炭素鋼Sch40/80・SUS・PVC・銅管・PE・鋳鉄)を 20 種類以上内蔵し、MSS・JIS・たわみ式の 3 系統を同時比較して最小値をそのまま推奨値として返す、保温と PVC 補正も含めた 1 画面ツールとして作った。Kindle 第5冊『配管設計入門』の第 2 章演習にも連動する。

サポート間隔とは何か

配管サポート間隔 とは

配管サポート間隔(hanger span、support span)とは、横引きの配管を吊り下げるまたは受け支える金具と金具の間の距離のこと。短くすれば支持金具の数が増えてコストと工期が膨らむ。長くすれば配管が自重でたわみ、振動・漏れ・継手破断の原因になる。両者のバランスを取る距離が「最大推奨サポート間隔」で、規格表や計算式で決める。

イメージとしては、物干し竿に洗濯物を掛けるのと同じだ。竿を支える物干し台の間隔が狭ければ竿はまっすぐだが、場所を取るし移動も面倒。間隔を広げすぎると真ん中で竿がぐにゃりと下がる。配管の場合、「竿」は管材、「洗濯物」は流体+保温、「物干し台」が吊り金具に相当する。

たわみ制約スパン 求め方

配管を3点以上で連続的に支持した場合、両端支持梁とは異なる係数が使われる。実務では連続梁の最大たわみ式を以下の形で扱う。

δ = w × L⁴ / (185 × E × I)

ここで δ[mm] が中央たわみ、w[N/mm] が分布荷重、L[mm] がスパン、E[MPa] が縦弾性係数、I[mm⁴] が断面二次モーメント。係数 185 は「3点連続支持」の公式値で、単純梁の384/5(≒77)と比べてたわみが小さくなる(つまりスパンを長く取れる)。

許容たわみ δ_allow を決めて逆算すれば、許容される最大スパンが出る。

L = (185 × E × I × δ_allow / w)^(1/4)

δ_allow の取り方は規格によって異なるが、実務では L/360 か最大 6mm の小さい方 がよく使われる。JIS B 8607 もおおむねこの考え方に沿う。

MSS SP-69 と JIS B 8607

MSS SP-69 は米国で 1976 年に初版が出た MSS(Manufacturers Standardization Society) の配管支持規格で、横引き配管の最大支持間隔を呼び径ごとに表で示している。「水などの液体で満水時」と「蒸気・ガスなどの気体時(空管含む)」で別表があり、後者の方がスパンを長く取れる(重量が軽いため)。

JIS B 8607 は日本独自の配管支持基準で、MSS より保守的な数値が並ぶ。これは日本の建築物の天井高・耐震要求・現場施工管理の習慣に合わせた結果といえる。

このツールでは、MSS は流体の有無で別表を引き分け、JIS は呼び径だけで1本の表を使う 。さらに独自にたわみ式から求めた制約スパンを計算し、3つの中で最も小さい値を推奨スパンとして採用する。

実務での重要性

支持間隔を広く取りすぎると何が起きるか。最も分かりやすいのは継手・フランジ・バルブ近傍の破断だ。配管中央でたわみが大きくなると、両端の支点とバルブ付け根に集中応力が発生する。水圧試験で漏れなかったフランジが、運転数年後に微小クラックから漏れ始めるケースは珍しくない。

落下事故の記録も無視できない。消費者庁や労働安全関連の報告では、ビル天井裏の配管が長期経年で金具腐食と過大スパンの複合要因により落下し、天井ボードを突き破って負傷者を出した事例がある。負荷が増える要因(保温材への吸水、凝縮水の滞留、外壁配管の積雪など)を考慮せず支持間隔を決めていた設計ミスが、調査で指摘されることが多い。

数値感覚を掴むために、100A 炭素鋼Sch40 の水満水を例に取る。自重 12.2 kgf/m + 水 8.71 kgf/m で合計 20.91 kgf/m。MSS は 5.2m を許容するが、JIS では 4.0m に落ちる。たわみ式からは 7.78m(E=205GPa, I=3.3×10⁶mm⁴, δ=6mm基準)と大きく取れるため、最小値の 4.0m が推奨 となる。仮にこれを 6m で施工すると、同じ計算でたわみは 2.24mm → 8.86mm に増加し、L/360 基準(16.7mm)は満たすものの、絶対値 6mm の基準を超えて再検討ラインに入る。

規格値を超えると直ちに壊れるわけではないが、継手寿命・地震時挙動・振動共振の余裕がじわじわ削られるのが配管設計の怖いところだ。建築基準法施行令や 建築設備設計基準(建築設備設計・施工上の運用指針)でも、配管の落下防止と支持間隔管理は耐震設計の一部として位置付けられている。

活躍する場面

工場・プラント新設時の配管ルート検討では、梁下の吊り点を決める前に「どの口径なら何 m 間隔で支持できるか」を先に把握しておきたい。このツールで管径ごとの推奨値を一覧化しておけば、後続の支持金具数量拾いが早い。

既設配管の改修レビューでも重宝する。水配管を蒸気に転用したり、断熱改修で保温厚を増やしたりする場合、合計荷重が変わる。現況の支持間隔で設計基準を満たすかを 30 秒で確認できる。

住宅・商業ビルの設備設計では、JIS B 8607 を参照する場面が多い。VP50 の給水管を 3m 間隔で支持していいのか、2m でないとダメなのか、運転温度(給水 20℃ vs 給湯 50℃)によって答えが変わる。ツールで温度入力するだけで PVC の短縮係数が自動適用される。

社内教育・新人トレーニングの教材としても使える。自分で Excel を作らせると材質プリセットの打ち込みでミスが出やすいが、既製ツールで「条件を変えると推奨スパンがこう動く」という感覚を掴んでから実務に入れば、OJT の時間が短縮される。

基本の使い方

ステップ1:管種と呼び径を選ぶ。管種プルダウンで炭素鋼Sch40 / Sch80 / SUS / PVC / 銅管などを選択、呼び径を 15A〜300A から選ぶ。JIS 規格の自重・断面二次モーメント・ヤング係数が自動で読み込まれる。

ステップ2:流体を選ぶ。「空・水・油・蒸気・他」から選択。満水時の流体密度が自動で計算に反映される。「他」を選んだ場合のみカスタム密度入力欄が出る。

ステップ3:保温仕様と運転温度を入力。保温材種別(グラスウール・ロックウール・珪酸カルシウム・発泡ウレタン)と厚み[mm]、運転温度[℃]を入力。保温重量も合計荷重に加算される。PVC 管で 40℃ 以上なら短縮係数 0.7 が自動適用される。

結果欄には自重・流体・保温・合計分布荷重 w、MSS SP-69 スパン・JIS B 8607 スパン・たわみ制約スパンの3系統、そして最小値を取った推奨最大間隔と、その推奨値で設置した場合のたわみ[mm]が並ぶ。判定は OK / 再検討 のバッジで即時確認できる。

具体的な使用例

ケース1:炭素鋼Sch40 100A 水満水・保温なし

工場内の冷水供給本管を想定。入力は管種「炭素鋼Sch40」、呼び径「100A」、流体「水」、保温「なし」、運転温度 20℃。

  • 配管自重 pipeW = 12.2 kgf/m
  • 流体重量 fluidW = π/4 × 105.3² × 1000 × 10⁻⁹ × 1000 = 8.71 kgf/m
  • 合計分布荷重 w = 20.91 kgf/m
  • MSS SP-69(水表)= 5.2m、JIS B 8607 = 4.0m、たわみ制約スパン = 7.78m
  • 推奨最大間隔 = min(5.2, 4.0, 7.78) = 4.0m(JIS 制約)
  • 推奨時のたわみ = 0.42mm、判定 OK

解釈:たわみには十分な余裕があるが、JIS の 4.0m 制約が効く。日本国内の一般工場なら JIS 値を採用して安全側に倒すのが現実的。

ケース2:SUS-Sch40s 100A 蒸気・保温50mm グラスウール 150℃

プラントの蒸気本管を想定。SUS 管は炭素鋼より弾性係数が低く(193 GPa vs 205 GPa)、保温もしっかり巻く。

  • 配管自重 12.2 kgf/m(SUS-Sch40s 100A)
  • 流体重量 0.04 kgf/m(蒸気 ρ=5 kg/m³)
  • 保温重量 insW = π/4 × ((114.3+100)² - 114.3²) × 32 × 10⁻⁶ = 0.83 kgf/m
  • 合計分布荷重 = 13.07 kgf/m
  • MSS SP-69(空・蒸気表)= 5.8m、JIS = 4.0m、たわみ制約 = 8.62m
  • 推奨最大間隔 = 4.0m、推奨時のたわみ 0.26mm、判定 OK

解釈:蒸気は流体重量が無視できるほど軽いため、MSS は空管側の大きい表(5.8m)を引ける。それでも JIS が 4.0m で律速する。保温 50mm の重量(0.83 kgf/m)は軽視しがちだが、300A 大口径になると数 kgf/m まで効く。

ケース3:PVC VP50 給水・常温 20℃

住宅・商業ビルの給水管。PVC は弾性係数がスチールの 1/60 程度(3.4 GPa)と極端に低いため、たわみ制約が効く典型。

  • 配管自重 1.42 kgf/m、流体重量 2.04 kgf/m(水)
  • 合計 3.46 kgf/m
  • MSS = 3.7m、JIS = 3.0m、たわみ制約 = 2.37m
  • PVC 短縮係数 = 1.0(20℃なので不適用)
  • 推奨最大間隔 = 2.37m(たわみ律速)、推奨時のたわみ 6.0mm(許容ギリ)、判定 OK

解釈:PVC は規格表(MSS/JIS)の値をそのまま使うと実際のたわみが許容値を超える。自分でたわみ式を解くと 2.37m まで縮む。これが「PVC は金属管より支持間隔を短くする」の定量的な根拠になる。

ケース4:PVC VP50 給湯・50℃

同じ VP50 を給湯系に転用した場合。運転温度を 50℃ にする。

  • 自重・流体重量は常温ケースと同じ
  • たわみ制約スパン = 2.37m
  • PVC 短縮係数 = 0.7(40℃以上)
  • 推奨最大間隔 = 2.37 × 0.7 = 1.66m、推奨時のたわみ 1.44mm、判定 OK

解釈:温度 30℃ の差で支持間隔が 2.37m → 1.66m に、実に 30% 縮む。給湯配管で「給水と同じ感覚で支持間隔を決めない」の定量インパクト。60℃ 以上の連続使用はそもそも PVC では推奨されないため、温泉配管や工業用熱水は耐熱グレードへの材質変更を考えるべき領域。

ケース5:炭素鋼Sch40 50A 油配管・常温

工作機械周りの油圧・潤滑油配管。油は水よりわずかに軽い(ρ=880 kg/m³)。

  • 配管自重 5.31 kgf/m
  • 流体重量 = π/4 × 52.9² × 880 × 10⁻⁶ = 1.93 kgf/m
  • 合計 7.24 kgf/m
  • MSS SP-69(水・油表)= 3.7m、JIS = 3.0m、たわみ制約は w の小さい分 大きく取れる
  • 推奨最大間隔 = 3.0m、判定 OK

解釈:油配管は水配管とほぼ同じ扱いでよい。MSS は非沸騰液体として水表を共用するのが慣行。国内施工なら JIS の 3.0m で決めるのが標準。

ケース6:炭素鋼Sch40 80A ガス空管

ガス・圧縮空気の配管。流体重量はほぼゼロ扱いで、MSS は空管側の大きい表を引ける。

  • 配管自重 9.12 kgf/m、流体重量 ≒ 0
  • 合計 9.12 kgf/m
  • MSS SP-69(空表) = 5.2m、JIS = 3.0m、たわみ制約 ≒ 7m 台
  • 推奨最大間隔 = 3.0m(JIS 制約)

解釈:空管・ガスは MSS で 5m を超えるが、JIS はサイズごとの画一的な 3.0m。国内現場は JIS 基準で進める。「ガス管は空管だから支持を減らせる」の思い込みを、JIS 採用案件では持ち込まない方がいい。

ケース7:炭素鋼Sch40 200A 大口径水配管

大口径の工業用水配管。重量が急に増える領域。

  • 配管自重 30.1 kgf/m、流体重量 = π/4 × 204.7² × 1000 × 10⁻⁶ = 32.90 kgf/m
  • 合計 63.0 kgf/m
  • MSS SP-69 = 6.4m、JIS = 5.0m、たわみ制約は十分大きい
  • 推奨最大間隔 = 5.0m(JIS 制約)、判定 OK

解釈:200A で合計 63 kgf/m ということは、支持間隔 5m で金具 1 カ所に 315kgf(約 3.1kN)の荷重が掛かる。吊りバンド 1 つではなく、アングル受けやサドル受けなど別種の支持方法を選ぶ判断が要る領域。本ツールの「荷重を可視化する」効用がここに出る。

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較:なぜ3系統の最小値か

配管サポート間隔を決める手法には大きく分けて3通りある。

  1. 規格表引き(MSS SP-69、JIS B 8607、ASME B31.1 など)。呼び径ごとに表で決まっている。実装は Lookup だけなので単純だが、規格ごとに数値が違う上、保温や特殊流体は守備範囲外。
  2. たわみ式による計算。梁の連続支持モデルで L を逆算する。荷重と材料物性を入れれば細かく攻められるが、どの許容たわみを使うかで結果が変わる(L/240、L/360、6mm固定など)。
  3. 応力ベースのFEM解析(CAESAR II・ROHR2 等)。最も厳密だが商用ソフトが必要で、ブラウザツールでは無理。

本ツールは 1 と 2 を組み合わせ、「規格2つ + たわみ式1つ」の3系統から最小値を採用する設計にした。規格単独だと保温や材質特性を拾えず、たわみ式単独だと日本・米国の実務慣行とズレる。3系統の下限を取れば、設計レビューで「どの基準でも OK」と主張できる。

実装詳細:計算フローの疑似コード

// 1. プリセットから配管物性を取得
const { weight: pipeW, Di, Do, inertia: I, eGPa } = PIPE_PRESETS
  .find(p => p.material === material && p.size === size);

// 2. 分布荷重[kgf/m]を合成
const rho_fluid = (fluid === 'custom') ? parseFloat(customRho) : FLUID[fluid].rho;
const fluidW = Math.PI/4 * Di*Di * 1000 * rho_fluid * 1e-9;

const tIns = parseFloat(thicknessStr) || 0;
const insOuter = Do + 2*tIns;
const insArea = Math.PI/4 * (insOuter*insOuter - Do*Do);
const insW = insArea * 1000 * INS[insulation].rho * 1e-9;

const totalW_kgpm = pipeW + fluidW + insW;

// 3. MSS/JIS 表引き(水・油は水表、空・蒸気は空表)
const mssSpan = (fluid === 'empty' || fluid === 'steam')
  ? MSS_EMPTY[size]
  : MSS_WATER[size];
const jisSpan = JIS_SPAN[size];

// 4. たわみ制約スパン(δ=wL⁴/(185·E·I) を L で逆算)
const E_MPa = eGPa * 1000;
const w_Nmm = totalW_kgpm * 9.81 / 1000;
const deflectionSpan_mm = Math.pow(185 * E_MPa * I * 6 / w_Nmm, 0.25);
const deflectionSpan = deflectionSpan_mm / 1000; // m

// 5. 最小値採用 + PVC 短縮係数
const rawRec = Math.min(mssSpan, jisSpan, deflectionSpan);
const pvcFactor = (material === 'pvc-vp' && temp >= 40) ? 0.7 : 1.0;
const recommendedSpan = rawRec * pvcFactor;

// 6. 推奨スパンでのたわみ検算(OK/再検討判定)
const deflectionAtRec = w_Nmm * Math.pow(recommendedSpan*1000, 4) / (185 * E_MPa * I);
const judgement = deflectionAtRec <= 6 + 0.01 ? 'OK' : '再検討';

計算例:PVC VP50 給水・常温のたわみ制約スパン導出

ケース3の数値を手計算でトレースする。

  • E = 3.4 GPa = 3400 MPa
  • I = 282754 mm⁴
  • δ_allow = 6 mm
  • 合計荷重 w = 3.46 kgf/m → 3.46 × 9.81 / 1000 = 0.03394 N/mm

分子を計算: 185 × 3400 × 282754 × 6 ≈ 1.067 × 10¹²

分子 / w = 1.067 × 10¹² / 0.03394 ≈ 3.143 × 10¹³

4乗根:(3.143 × 10¹³)^(1/4) ≈ 2370 mm = 2.37 m

この 2.37m が MSS の 3.7m・JIS の 3.0m より小さいため、推奨スパンを律速する。PVC の弾性係数が鋼の 1/60 しかないのが効いている。

PVC 短縮係数 0.7 の根拠

PVC は高分子材料で、温度上昇によりクリープ(長時間荷重下での変形)が進む。メーカーカタログや配管技術ハンドブックでは、20℃ 基準のスパンを 40℃ で約 0.7 倍、60℃ で約 0.5 倍に縮めるよう推奨される。本ツールは 40℃ 閾値で 0.7 倍を機械的に適用する簡略モデル。より厳密には温度-時間-ひずみ曲線から係数を読み取るが、実務では 0.7 のキリ番係数が慣行値として通用する。60℃ 以上の領域はそもそも PVC 適用外とし、耐熱塩ビ(HT-VP)やポリプロピレン・鋼管への変更を検討する。

他ツールとの違い

配管サポート間隔を出してくれるWebツールは海外の機械メーカー製が中心で、ほとんどが英語かつ単位系もインチベース。日本の現場で必要な「呼び径A表記」「JIS B 8607の数値」「SUSやVPまでカバー」「保温込み」「日本語で根拠が読める」を全部満たしているものは意外と少ない。

このツールは以下の点で他を引き離す。

MSS SP-69・JIS B 8607・たわみ制約の3系統を同時比較。海外ツールはMSSだけ、国内配管本はJIS表だけというケースが多く、両者を並べて小さい方を採るという実務判断をしてくれない。ここでは3つの推奨スパンを並列表示し、自動で最小値を採用。「なぜこの値か」が一目で追える。

保温材・流体重量を合算。MSS表は水配管と空配管で別表を持つが、保温材の重量増までは表に含まれない。蒸気本管の珪酸カルシウム厚50mmなどは保温だけで10kgf/m近く積み増すことがあり、合計荷重 w を正しく出さないとたわみ計算が甘くなる。

PVC高温短縮係数の自動適用。40℃以上でクリープ変形が進むPVC配管の0.7倍補正は、日本語の配管Webツールではまず実装されていない。給湯用HTVP管を検討するときに効いてくる。

Kindle『配管設計入門』第2章の演習と数値が一致。書籍を読みながらその場で計算検証できるのは、他のどのWebツールにもない独自価値。

豆知識・読み物

MSS SP-69が生まれた背景

MSS(Manufacturers Standardization Society of the Valve and Fittings Industry)は1924年にアメリカで設立された、バルブ・継手・支持金具の業界団体だ。SP-69「Pipe Hangers and Supports - Selection and Application」は1953年に初版が出て、70年以上アップデートされ続けている。面白いのは、ASMEのB31配管コードや各種プラント仕様書がこぞってSP-69を参照していることで、事実上の業界標準として定着した。日本の配管設計者が英語規格を読む機会は多くないが、大型プラントではSP-69が指定図書になることもあるので、名前だけでも覚えておいて損はない。

配管支持金具のバリエーション

「サポート」と一口に言っても、現場で使われる金具は実に多彩だ。

  • 吊りバンド(クランプ+吊りボルト): 最も一般的。天井スラブから鋼製バンドで配管を吊る。横引き配管の9割はこれ
  • Uボルト: 形鋼に配管を抱きかかえる形で固定。剛性が高いが熱膨張の逃げが少ない
  • スプリングハンガー: ばねで荷重を支える。熱膨張で上下動する高温配管(蒸気・温水)の固定端近くに使う
  • コンスタントハンガー: 配管が上下してもほぼ一定荷重を保つ高級品。発電プラントの大型蒸気管用
  • サドル(架台): 床置き配管の受け金具。下から支えるタイプ

このツールで出すのはあくまで「支持点同士の最大距離」であり、どの金具を使うかは別の判断軸になる。参考リンク: 配管支持金具 - Wikipedia

たわみ係数185の正体

たわみ式 δ = w·L⁴/(185·E·I) に出てくる185という数字。これは「等間隔に並んだ3点以上の連続梁」の中央付近に生じる最大たわみの係数で、単純支持梁(両端支点の1スパン)の384/5≈76.8より大きい。つまり連続配管の方がたわみにくい。MSS SP-69もこの連続梁モデルを採用しており、現場の配管は隣のスパンに支えられて粘るので、単純梁で評価すると過剰に保守側になる。

Tips

1. バルブ・フランジ近傍はスパンを詰める

バルブや大口径フランジは局所的に荷重が集中する。原則「バルブから1m以内に支持点を設ける」「フランジ両側に支持」を守ると、偏心荷重による曲げ応力を逃がせる。配管設計の常識だが意外と見落とされやすい。

2. 熱膨張する配管は拘束点と可動点を分ける

蒸気・温水配管は熱で伸縮する。全点を固定すると応力が逃げず、フランジや溶接部が割れる。「アンカー(完全固定)」「ガイド(軸方向のみ自由)」「ハンガー(上下動自由)」を使い分けるのが鉄則。このツールの推奨間隔は「支持点の最大距離」であり、拘束種別は別途検討が必要。

3. 振動源の近くは支持を増やす

ポンプ・コンプレッサ直近は配管が共振しやすい。推奨スパンの0.5〜0.7倍に縮めるか、防振支持(ゴム・スプリング)に切り替える。共振周波数計算は別ツールで。

4. 保温付き配管は「支持シュー」を使う

保温材をそのまま吊りバンドで締めると潰れて断熱性能が落ちる。保温の内側に硬質シュー(アングル鋼やカルシウムシリケート製)を仕込み、そこでバンドを受けるのが標準。重量計算にはシュー分も含めて少し余裕を持たせたい。

5. 竪管は別設計

このツールは横引き前提。竪管(垂直配管)は「床貫通部での支持」「下端のアンカー」「中間のUボルト」など別ロジックになる。竪管の支持間隔は階高や壁構造に依存することが多く、規格表をそのまま当てられない。

FAQ

満水で計算すべきか、通常運転状態で計算すべきか

基本は満水で計算する。水配管でも運転中は満水、気体配管でもテスト時は水圧試験で満水になる時間帯があり、そのときの荷重に耐える必要があるから。MSS SP-69も水配管用の推奨スパン表は満水前提。例外はガス専用配管で水圧試験を行わないと確認できている場合で、そのとき空管用の大きいスパン表を適用できる。このツールは流体選択を「空/水/油/蒸気/他」から選べるので、施工中の水張試験と運転状態を別々に評価して厳しい方を採るのがおすすめ。

竪管の場合はこの計算が使える?

使えない。このツールは横引き配管の曲げたわみを前提にしており、竪管の軸方向圧縮や座屈・床スラブでの支持は対象外。竪管は「下端固定(アンカー)+各階スラブでUボルト」「熱膨張を吸収する可動支持」という別ロジックで設計する。階高3m程度なら各階1点で十分だが、3階建て以上の蒸気竪管はスプリングハンガーや膨張曲げ管を組み合わせる必要がある。竪管の詳細はMSS SP-58(材料と製造規格)とJIS B 8605(配管吊り工事仕様)を参照。

地震時の揺れや熱膨張はどう考慮する?

本ツールの推奨間隔は静的な自重たわみのみを見ており、地震時の水平力や熱膨張による軸力は含んでいない。重要配管では以下の追加評価が必要。

  • 耐震: 建築設備耐震設計・施工指針(国土交通省)に基づき、横引きは片側8m以内、竪管は階ごとに耐震支持を設置
  • 熱膨張: 蒸気100℃・鋼管10m12mm前後伸びる。ループ・曲げ管・エキスパンションジョイントで吸収
  • 振動: ポンプ直下の配管はフレキシブル継手と防振支持で縁切り

詳細検討は配管応力解析ソフト(Caesar II・AutoPIPEなど)や構造設計者の連携が必要になる。

保温材の重量は無視していい?

無視できない。ロックウール60Kや珪酸カルシウムなど重い保温材では、100Aの蒸気配管で保温だけで8〜15kgf/m、配管自重12kgf/mに匹敵する。これを入れずに計算すると、たわみが1.5〜2倍になり、天井裏で配管が目に見えて垂れる原因になる。本ツールは保温材密度と厚みから外径環状面積を計算し重量に反映している。グラスウール32Kは軽いが、厚み50mmになると100Aで1.6kgf/m程度あるので、長尺配管では効いてくる。

JIS表とMSS表、どちらを優先すべき?

結論から言うと両方見て小さい方を採るのが実務。JIS B 8607は日本の施工現場向けで、ユーザーの熟練度や施工品質のばらつきを考慮した保守寄りの値。MSS SP-69は米国エンジニアリング標準で、たわみ許容量をL/3606mm基準に揃えた合理的な値。同じ100Aでも満水でJIS 4.0m・MSS 5.2mと差が出る。個別案件で発注者指定がある場合(プラントはMSS指定が多い・建築設備はJIS指定が多い)はそれに従い、指定がなければ安全側のJISを採用しておけば後で指摘されにくい。このツールは3つ並べて表示するので、根拠を示して決める判断材料になる。

まとめ

配管サポート間隔は「強度(MSS)」「施工慣習(JIS)」「たわみ見栄え(連続梁計算)」の3つの視点で同時に決めるべきもの。1つの表だけ見て決めると、荷重条件の変化で必ず後悔する。このツールは3系統を横並びで表示し、自重・流体・保温まで合算した合計荷重から判定するので、現場の設計図面と突き合わせながら使ってほしい。

流速や圧力損失の検討には /pipe-flow-calc、保温材の厚み選定には /pipe-insulation を合わせて使えば、配管設計の主要数値が一通り揃う。不明点や追加してほしい管種があれば、お問い合わせフォームから気軽に連絡してほしい。

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Mahiro

Mahiro Appの開発者。現場の天井裏で蒸気本管が数十mm垂れていた光景が忘れられず、MSS/JIS/たわみの3系統を1画面で比較できるツールとして作った。

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